23. スタバ (ナディア)

「ゲーム スタート」という巨大な文字が頭上に現れた。


私とジャックは口をあんぐり開けたと思う。心底驚いた。


その朝、私は未確認飛行物体に乗っていた子供たちを見かけた通りをジャックと通り過ぎた。そして、スタバがある交差点に差し掛かっていたのだ。


すると、本当に突然、子供たちがいきなり私たちの目の前に出現した。私とジャックは驚いたが、目的の子供たちに会えて、とても嬉しかった。


しかし、頭上に現れた巨大文字の意味は全く分からなかった。


私はよくよく子供たちを見た。その時、2人、衛星写真には乗っていない人物がそこにいることに気づいた。超がつくほど格好良いおしゃれな格好をした男の子と、なんだか日本人のように見える若い男性だった。


私のことを日本人の男性が知っているのは明白だった。彼は、私が誰だか気づくと明らかに興奮していた。衛星写真に写っていた、褐色の肌の女の子が「ナディア姫なの?」と聞いてきたので、私はそうだと答えた。すると、女の子も興奮していた。


子供たちはすぐ近くのスタバに行くと言う。女の子の母親がいるらしい。

そこで、私とジャックもスタバについて行った。


しかし、スタバの店内で、よくない展開になった。


まず、そのサファイアという女の子の母親が私に気づき、話しているうちに、次々とスタバ中の人が私に気づいてしまった。私はサインを求められ、気軽に応じた。


途中で、サインを求めて近づいてきた人物の中に、見たことのある人物が紛れていたことに私は気づいた。思わず、私はフードをかぶり、さりげなく外に出ようとした。


私は素早く自分の記憶を遡った。私は非常に記憶力が良い方だ。

彼は、私が空母から戦闘機を飛ばした時、そこにいた人物の一人だった。あの日、戦闘機を飛ばす段階で、二人のパイロットのうち、どちらが私の戦闘機を操縦するかでもめた。


つまり、あの日、戦闘機に乗れなかった方の彼が、スタバに偶然居合わせたのだ。私のことを作家のナディアだとは彼は今のいままで気づいていなかった可能性がある。戦闘機に乗った時、私は変装していたのだ。某国の偵察をする目的だったし、完全にスパイ活動の一貫だった。


しかし、戦闘機からおりた途端の私の素顔を見たかも知れず、彼は、今日私の顔を見て、何かを思い出したようにはっとした顔になった。それから目を細めて彼は私をじっと見つめた。


撤収した方が良い。


私は足早に、しかし、さりげなく店の外に出ようとした。そこで、突然、暴漢2人がやってきたのだ。銃を出された瞬間、思わず空手の技で彼らを仕留めようとしたが、その前に、目も止まらぬ速さで、一緒にスタバにやってきていた例の日本人らしい若い男性が見事なドロップキックをして、二人組の暴漢は完全に店の外にのびた。


すごいスピードだった。

私はその日本人らしい若い男性をまじまじとみて、そちらに気を取られてしまった。


そこに私の背後から近づいてきていたらしい、戦闘機のパイロットだった男を、また日本人の若い男性がぶん投げた。柔道の達人でもあるのかしら・・・


しかし、私はその瞬間、なぜかその日本人の男性に両手をつかんで飛ばされた。


まるでアイスショーをやっているかのように。


私は反射的に綺麗なフォーメーションを取り、外壁を走って駆け上がり、そのまま戦闘機のパイロットだった男に飛び降りつつ空手のツキを決めた。


見事に決まった。

しかし、一部始終を完全に一般の人にスマホで動画を撮られた。元々、私がスタバに現れた時から、一般人にスマホのカメラは向けられていたのだ。


思わず、私は私の経歴を振り返った。私は、空手と柔道の達人だ。暴漢に襲われたら、技を駆使してもおかしくなない。しかし、・・・壁を走るのは、やりすぎだ。


私は戦闘機のパイロットの男に、「命が惜しければ、黙ってなさい。」とささやき、子供たちと一緒にその場を走り去った。


気絶した彼には聞こえないわね・・・

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る