21. 結構煙った(颯介)

「ゲーム、クリア」の巨大な文字が頭上に出現し、気づくと3人の子供たちと俺は伯爵の家のキッチンにいた。


「早かったな!」伯爵はほくほく顔でそう3人の子供たちと俺に言った。

「よこしなさい!」そう言って、ジョージアの手から玉手箱を取り、止める間もなく、箱の蓋を開けた。


 ええ!!


「逃げろ!ピーター。ジョージア、レオ!この煙を浴びてはならないんだよ!」

 俺は叫び、3人の子供たちを抱えるように伯爵から遠ざけた。


 辺り一面に白い煙が箱から立ち込み始め、3人の子供たちと俺は悲鳴をあげて、伯爵の屋敷のキッチンから逃げ出した。


 満月の夜に忍び込んだ時のように、全速力で庭を走り抜け、伯爵家の大きな門が閉まっていたので、例の二十三本目の木の下の穴から外に這い出した。俺は戸惑ったが、門の鍵は伯爵じいさんの腰にぶら下がっていることを思い出し、子供たちに従った。穴を這い出すことで、泥だらけになった。

 

 外にでて、レオがジョージアの髪を見て、悲鳴をあげた。

「姉ちゃん!髪の先が白くなっているよ!」

「にいちゃの髪の先も白い!」

「レオの髪も先が真っ白になっているわ!」


「玉手箱の煙を浴びたからだね。」ピーターは言った。

「でも、髪の毛の他は、全然、僕らは変わっていない。白髪になってしまった髪の先っぽを切れば大丈夫だよ。」ピーターは弟と妹を落ち着かせるように言った。


 俺は?俺の髪は?


「颯介さんの髪は大丈夫ですよ。」ピーターとジョージアとレオが代わりばんこに俺の髪をチェックして、太鼓判を押してくれた。


「なんか俺老けてない?」おそるおそる聞いたが、3人とも大丈夫だと力強く保証してくれて、俺は一安心した。


「すぐに逃げたから、私たちも髪の先っぽ以外は大丈夫だわ。」ジョージアはそう言った。3人の子供たちと俺は村の通りを抜けて、子供たちの家に向かった。


 俺は、内心、あんな爺さんの状況で、玉手箱の煙を浴びたなら、伯爵には悪いけど死んだのかなーとか思っていた。だから言わんこっちゃない、と俺は心の中で伯爵が悪いんだからなーと思っていた。が、正直、老人を止められなかったことで、ちょっと後ろめたい・・・

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