19. ガストロノムスバックストッカー家 VS 平安貴族 VS 龍者の実のまっき(颯介)
広大な庭が広がり、立派な池が造られ、花が咲き乱れている。庭では平安貴族が蹴鞠にいそしんでいる。
俺は、ここまでの流れを振り返り、ため息をついた。
経緯はこうだ。
◇◇◇◇◇
サバンナには夕暮れが迫り、絶望感が全身に押し寄せる光景が広がっているのを俺はしみじみ感じた。
無理だ。。ここで生き延びるなんて無理ゲー過ぎる。
どこまでも続く草原の向こうに、地平線がずっと広がり、あちこちに危険な野生動物がいるのが目に入った。
ひとまず、龍者の実の効能が薄れてきているかもしれないと思った俺は、前回もサバンナに来たと言ってた3人の子供たちの案内に頼りに、岩陰にある泉を目指して翼竜の背中に乗って飛んで行った
上空から見たかぎり、泉の周辺には危険生物はいないように見えた。危機的状況を脱していると思った俺と3人の子供たちは、プテラノドンに泉におろしてもらった。
ありがとね!
俺は礼を言ったが、プテラノドンは去ろうとしない。
うーん、いつまで龍者の実のひとかじり効能は続くんだろう?
とにかく、ジョージアが岩にある「王」の文字に手をかけ、その肩をピーター、レオー、俺でつかみ、ジョージアが岩の「王」の文字を押した。
おお??
途端に、俺と3人の子供たちはどこか日本的な立派な神社の前に立っていた。
牛・車・が行き交っている。京都なのか?でも、いつの時代?なんか明らかに服装も髪型も、俺が知っているのとはまるで違うぞ?ピンクの桜が咲き乱れていて、赤い天守閣も見える。ここは何時代だ?
その途端、頭上に巨大な「ゲーム スタート」の文字が斜めに出現したのを、俺ははっきりみた。
このゲームやばい・・・
俺は改めて身震いした。なんなんだよ、このゲームは。
「うぎゃあ!!!」
突然、行き交う人々が、恐怖に満ちた叫び声をあげて、ちりじりに去っていった。
俺は、なぜあんな叫び声を上げられて一気に逃げ去られたのかさっぱり分からなかった。
「ね、怪・物・さんが付いてきているよ。」一番小さなレオが、俺の服の袖をつかみ、後ろを振り向くように促した。
「え?」俺は振り向いて心底驚いた。
明らかに、京都の大通りに、違和感があるものが存在していた。翼・竜・だ・・・
プテラノドンさん、つ、ついてきてる・・・
うーん、仕方がない。よく分からないけど、こうなったら乗るか。
俺は、ジョージア、ピーター、レオと一緒にまた翼竜にまたがって空を飛び、辺りを旋回した。
神社の隣から賑やかな声がしているので、そちらの屋敷を上空から覗くと、蹴鞠を皆でしているのが見えた。あー、どう見ても、どっから見ても、立派な平安貴族だ。
大きな広い庭で、池や花が咲き乱れている。こういうのをなんて言うんだっけ?寝殿造りだっけ・・・
へ、平安時代の京の都なの?ここは。
あー、分かった、分かった。俺ははたと思い出した。京都に浦島神社というのがある。そうか、そうか、あれか?
って、え、うっそー?あれが建設された時代に来ちゃっているって言うこと?
本当に、なんかこのゲームやばい。
早く玉手箱をゲットしてずらかろう。龍者の実をひとかじりだけだから、この力がいつまで持つか分からないし。龍者の実はあの時サバンナでかじったまま、リュックに放り込んである。チョコの菓子パンを食べた後の袋に放り込んで丸めてあった。
俺はプテラノドンに、神社の境内に降りるように頼んだ。
神社の境内は大騒ぎだ。何せ、空から突然、怪物が舞い降りたのだから。この時代の日本なら、多分、やっぱり龍だと思うよね?普通。
馬に乗って、弓矢を構えた人たちが大勢現れて、こっちに矢を放って来た。うーん、何かの絵図で見た通りの戦い方だ。あっぶない、あっぶない。それらの矢をうまーくかわして、プテラノドンは境内に着地した。いや、多少刺さってもプテラノドンにはまるで響かなかった。
僧侶たちが右往左往して逃げ惑っている中で、俺は忍者のように素早く動いた。もちろん、足の速さが自慢という3人の子供たちも俊足を活かして、忠実に俺の後を追ってきた。
命がかかっているんだ。早く見つけてここから脱出しないと、死んでしまうはずだ。また、矢に射られてライフマイナス1とか出たら、本当に今度こそ死んでしまうかもしれない。
俺は神社の中に侵入した。普通なら、この辺りに宝物を飾ってあるはず・・・・あった!!!!!!
俺たちは、祭殿らしきところで、後生大事に祀られている玉手箱のようなものをゲットした。
「これだよ!絶対に開けちゃダメなんだ。」俺は3人の子供たちに言った。
「分かった。私が持つわ。」ジョージアがしっかり抱えた。
「で、どうやったら、このゲームから脱出できるの?」俺は素朴な疑問を今更ながらピーターに問いかけた。
「食べ物を手に入れたら、脱出できるんだ。」3人の子供たちは声を揃えて俺に教えてくれた。
なるほど、なるほど、そうか、そうか。食べ物?
となると、この神社で一番偉い所の部屋に行ったら、水飴でもあるんじゃなかろうか。俺はそう思った。アニメの一休さんにかぶれた発想でごめん。
立派な神社の中を、とにかく必死で俺たちはウロウロして、ようやく一番立派な部屋にたどり着いた。
「ひー!!!!!!」
腰を抜かしてしまった、平安貴族っぽい服をきたおじさんに悲鳴をあげられながら、俺はそのおじさんの前に据えられた、もちみたいな食べ物を目ざとく見つけた。
「ピーター?一応、あれはこの国の、この時代の食い物だ。あれでいけるか?」俺はピーターにおそるおそるきいた。
「大丈夫。さあ、みんな俺の肩に手をかけて。」
ピーターは素早く言い、その餅のようなものを手に持った。俺たちは仲良くピーターの肩に手をかけた。
その途端、矢を構えた兵士のような奴らが部屋に乱入してきた。
くっそー、見つかったか。
「い・で・よ・、・ド・ブ・ネ・ズ・ミ・!・」ピーターが叫んだ。
なんじゃそりゃ。
「ゲーム クリア」の巨大な文字が空中に出現したのを俺は一瞬目にした。
危機一髪でグーンと辺りが暗転して、俺の目の前には、あの伯爵爺さんが立っていた。
あ?助かった?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます