19. ガストロノムスバックストッカー家 VS チーター VS 龍者の実のまっき(颯介)
ガストロノムスバックストッカー家は足が速いんだ。
俺の耳には、ピーターがそうささやいたのが聞こえた。その途端、3人は無言で一気に走り始めた。
着いてこい!颯介!
俺は何がなんだか分からずに走った。気づいた。チーターの群れが全速力で迫ってきている。
ひえー!!
俺は声にならない雄叫びを上げた。無理だ無理だ無理だ無理だ無理だあ!!
チーターと言えば高速道路を走る車より速いことで有名だ。俺ってそんなに速くない。そもそも人類はそんなに速くない。俺は派手に転んだ。慌てすぎて、足が恐怖でもつれて何かにつまづいた。
派手に転んだ挙句に、地面にうつ伏せにのびた。ハッとして後ろを振り返ると、チーターが飛びかかってきたのが見えた。スローモーションに見える。
その時だ。目の端に、俺が背中に持っていたリュックから何かが転がり出たのが見えた。
りゅ、りゅ、龍者の実!
俺は手を伸ばし、一口かじった。
その瞬間、俺が回転して横にすっ飛び、飛びかかってきたチーターをかわして体勢を整えた。猛然と向きを変えて襲いかかってくるチータを再び華麗に交わし、リュックを掴み取り、手に龍者の実を持ったまま、全速力で走り始めた。
はっやー!!
俺はどさくさに紛れてカメラアプリでの撮影会のとき、「認識されました」と機械音で告げられた龍者の実とやらを持ってきてしまっていた。
気づいた時にはUFOに逃げ返っていて、大気圏突入して地球に帰還していたので、黙っていたのだが、あの時確かに持ってきてしまっていたのだ。人生初の盗みでした。ごめんなさい。
しかし、チーターは速かった。
俺はすぐに子供たちに追いついたが、チーターの群れは、後ろから猛然と本気の狩りを仕掛けてきていた。
その時だ。何かが頭上で大きな影を作った。
翼竜!!!!プテラノドンさまですか?貴方様は?
俺は翼竜に飛び乗り、手を伸ばして3人の子供たちを次々と翼竜の上に引き上げた。
悠然とサバンナの上空を遥か高く翼竜が飛び、太古の昔ではあり得なかったご対面が繰り広げられた。チーター、キリン、ライオン、バッファローの群れの上空をゆっくりと翼竜が旋回した。
ああ、そうか、そうか。またカメラアプリで認識させる撮影会をやっていると思っているんだね・・・
「違う、違ーう。」俺は慌てて翼竜に言った。
もう、旋回しなくて大丈夫だよ、命の恩人よ。
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