9. 王子の乗り物(颯介)

 俺は、のんびりハリウッド撮影の子役たち(だと思っていた)を、眺めていた。しかし、どうも様子が変だと気づいたのは、スタバの入り口に2人の銃を持った男たちが現れた時だった。


 変だぞ?


 撮影か?と聞いた俺の声に、さっきのスターのような王子役の男の子が「違う!」と答えた。そこでハッとした。これは逃げなければならない。俺は王子役の男の子が空手のつきのような動きをして暴漢2人をやっつけて、周囲の男性陣が倒れた男たちを取り押さえたのを見ると、一目散に店から飛び出した。


 そして、なぜか、俺は子供たちの後を追って走った。無我夢中だった。田中さんのことはすっかり頭から消えて、もう何がなんだか分からなくなっていた。


 子供たちが、空飛ぶ円盤のような乗り物に飛び乗った時、本当になぜだかわからないのだが、俺も飛び乗ってしまった。その時、俺の頭には、なぜ円盤?とかそういう疑問は一ミリも湧かなかった。ただ後について行ってしまったのだ。


 「ええ?」


 明らかに動揺したような声をスターのような例の王子役の男の子は出したが、男の子も円盤に飛び乗ってきて、円盤の扉はしまった。円盤はすぐに旋回して、急上昇して空中に高く上がり始めた。そして前進を始めた。


 この辺りで、僕は自分がまるで映画の中に入ったかのような気持ちになった。えらい昔のヨーロッパの子供たちのような格好をした子供たちだと思っていたが、時代映画の撮影ものではなくSF映画の撮影のような雰囲気になっていた。俺は、あーこれはハリウッドの新しいSF映画を撮影中なのかな、とかぼんやり思った。



 でも、やたらよくできた円盤だな、とも思った。CGじゃないんだーと感心した。ここで、やっと、「いや、自分が撮影に参加しているのはまずいのではないか」と自分が突然乗り込んでしまったことに思いを巡らせ始めた。


 俺、なんでここにいるんだ?

 そもそも、こんな凄い撮影に勝手に混ざっているのはいいのか?

 ものすごく精度の高い高度なドッキリとか?



 その時、円盤が急に何か大きなものにぶつかりそうになり、子供たちが悲鳴を上げた。


 そして、僕の目にもはっきりとその文字が見えたのだ。


 目の前に巨大な四角のボタンが2つ現れた。


 左のボタンには「サバンナに戻ってリプレイ」、

 右のボタンには「龍者の国に進む。ライフ マイナス1」と書いてあった。


 注釈)右に進むと龍と忍者の国に行ってタスクを消化してもらいます。


 なんだよ、これ・・・

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