9. ぶ、ぶらっくほーる?

 左のボタンには「サバンナに戻ってリプレイ」、

 右のボタンには「龍者の国に進む。ライフ マイナス1」とある。


 ジョージアは迷わず右のボタンを押した。


 流線型の乗り物は、急上昇して大気圏を突破し、あっという間に真っ暗な宇宙に飛び出した。


 3人の子供たちは、宇宙という概念も知らなかったし、幽霊キングのダッカーの乗り物が空を駆け上がって天高く上った時点で、死を覚悟した。じいちゃんはきっと別のボタンを押したに違いない。自分たちは一つ命を失ったが、きっとまた命を失うに違いないと絶望的に感じた。


 ピーターは特に強く思った。自分たちは食料調達の冒険に失敗したのだと思った。伯爵の家に忍び込んでバッファローの群れを交わして王手をかけた後のことは、じいちゃんの旅については、最後の戻ってくる瞬間のことしか聞いていなかった。幽霊キングのダッカーの不思議な乗り物のことは、全く聞いたこともなかったのだ。


 だめだわ・・

 私たち、本当に失敗したのかもしれない・・・


 ジョージアはまた震えが止まらなくなってきた。

 子供たちが恐れ慄いて静かにしていると、突然、お掃除おばけのエメラルは突然、御者席からを立ち上がって、うやうやしく言った。

「これより、宇宙で戦っていただきます。」


 ますます、意味分からないわ


「ピーターさまは右に直進するボタンと右側の攻撃射を操縦願います。」

「ジョージアさまは、進行コントローラー菅を操縦願います。」

「レオさまは左に直進するボタンと左側の攻撃射を操縦願います。」


 エメラルとダッカーは、ピーター、ジョージア、レオにそれぞれ操作方法を丁寧に教えた。サファイアは、副操縦士と呼ばれて、慣れた様子でもう一つの御者席のような椅子に座って沢山のボタンを前に座っていた。


「さあ、来るぞ!」王たる振る舞いを漂わせ、ダッカーが腕組みしてキリッと前方を見て言った。


 幽霊キングのダッカーの乗り物は「宇宙船」と言うらしい。ピーターとジョージアとレオは、そう説明を受けた。空高く飛び、今まで自分たちが住んでいた星を離れた後は、この真っ暗な宇宙と呼ばれる場所で、同じく沢山の敵の宇宙船と戦って生き延びないとならないらしい。


 村では、ガストロノムスバックストッカー家は俊足でとてつもなく足が早い家系だと言われていた。しかし、3人の子供たちの父親も含めて、子供たちの誰一人り、牛車も馬車も操縦したことなどなかった。せいぜい、馬に乗ったことがあるくらいだ。


 ただ、敵をやっつけないと、こちらがやられてしまって死んでしまうということだけは3人の子供たちは分かっていた。与えられた命は後2つしかない。簡単に攻撃されて死んでしまうわけにはいかないのだ。


 大きな岩のような固まりがいくつも漂うのが前方の宇宙全体が見える窓には映っていた。そこに、無数のダッカーと同じような宇宙船が姿を表すのが見えた。暗闇から浮かび上がるように姿を現すのは圧巻の光景だった。


 す・ご・い・数・だ・わ・!・

 あんなの見たことない数よ!


「ジョージア、ピーター、レオ、狙いを定めて打て。そして、敵の攻撃を交わしながら、縦横無尽に宇宙船を飛ばすんだ。」ダッカーがまるで軍艦を率いる王たる振る舞いで、威厳を持って静かに言った。


 その時、キラッと閃光のようなものが無数に前方の宇宙船から発射された。敵の攻撃だ!ジョージアは必死で宇宙船を上に上昇させた。


 ああ!何て怖さなの!


「右旋回!」ダッカーが言い、ピーターは教わった通りに右に宇宙船を旋回させた。そして、レオは無数の宇宙船に向かって砲撃を仕掛けた。ジョージアも、サファイアも敵の宇宙船めがけて砲撃を仕掛けた。


「攻撃を続けるんだ!今度は左旋回して急降下!」ダッカーがそう言い、レオは左に旋回させ、ジョージアが急降下させた。ピーターとサファイアは砲撃を仕掛け続けた。三人の子供たちは汗びっしょりで、緊張と興奮のあまりに手にも汗を書いていた。


 もう、こうなったら出来る出来ないの問題ではないわ!

 やるしかないのよ!


 こちらの砲撃が当たった宇宙船は流れるように落下していった。一度、凄まじい敵の攻撃をかわしきれずにまともにダッカーの宇宙船に当たってしまった。その時、「命を一つマイナス」という大きな文言が宇宙に現れて、3人の子供たちは恐怖に固まりながら見た。残りは1つになってしまった。

 

 だいぶ時間が経ち、必死に敵の宇宙船の攻撃を交わし続けているうちに、敵の宇宙船が一つも動いていないことに三人の子供たちは気づいた。


「どうやら、僕らは宇宙戦争に勝ったようだ。」幽霊キングのダッカーはほっとしたように言った。


「さあ、次はブラックホールに入りますぞ。」エメラルはそう叫び、宇宙船を思いっきり傾けて横に見えていた真っ黒い穴に入らせた。


 ぶ、ぶらっくほーる?


「次は、龍者の国でタスクを消化するのです。」

「このカメラアプリで、超忍者になれる木の実を撮影して、カメラに認識させることが出来たらミッション成功となります。」エメラルは、3人の子供たちの頭に何か黒いものがついた輪っかを被せた。そして、隅っこでへたり込んでいた若い男性の頭にもその輪っかを被せた。


 「ええ!」


 若い男性はびっくりした様子でぽかんとエメラルを見つめた。

(我らが颯介も、ですかね。。?)

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