7. 次期キングの戦闘能力
「ここには敵はいなそうだね。」レオはのんびりと楽しそうに言った。
母さんがいた頃、ジョージアは伯爵家のドレス棚を見たことがあったが、それよりうっとりする甘美な味のドーナツだった。ひとときでも、貧しい子供たちの心を幸せで満たす味だった。
「そろそろここから出よう。サファイアの母さんは、児童相談所の人を呼んだ。」
ダッカーは少し早口になって言った。
サファイアはダッカーの言葉に頷くと真剣な顔をして、顔をグッと3人の子供たちに近づけてささやいた。
「せーのの合図で席を立つ。そして、素早く入り口に向かう。入り口を出たら左に向かって一直線にひたすら走るのよ。最初の角でまた左に曲がる。いい?」サファイアはそう言って、3人の顔をのぞきこんだ。
「分かったよ。」ピーターが頷き、ジョージアとレオも真剣な顔で頷いた。
「せーの。」
サファイアが言った途端、ボロボロの服を着た3人の子供たちは立ち上がり、素早く入り口に向かった。
あと数歩で入り口に着こうとした時、突然、銃を構えた2人の男たちが入り口を塞いだ。
「動くな!」
「金をよこせ!」
そして、弾を2発、発砲した。
3人の子供たちは今まで銃を見たことがなかったので、そのまま店内の入り口に向かって、走って突進した。中世ヨーロッパの貧しい村ではそんな小さな銃を見たこともなかった。ちっぽけな棒のようなものを持っているなと思ったぐらいだった。怖さを全くと言ってもいいほど感じなかったのだ。伯爵ですら小さな銃を持っていはいなかった。
突進してきた子供たちに驚いた男の一人は、反射的に動くものに向けるように銃を真っ直ぐピーターに向けた。ピタッと狙いを定めて構えた。今にも撃ち殺してしまいそうだ。
「子供はやめて!」誰かの必死の叫び声がした。サファイアの母親の声だ。
その途端、幽霊キングのダッカーが華麗にその男の銃を叩き落とした。あまりに一瞬のことだった。周りの人には、ボロボロの男の子のピーターに銃を向けた男が、勝手に銃を落としたように見えた。
もう一人の男は天井に向かって発砲した。
一体なんなの?
すごい音が続けてしたわ!
3発の銃の音に驚いたピーターとジージアとレオの3人は、一目さんに外に飛び出した。今までの人生で聞いたこともない音が突然すぐ近くでしたのだ。
天井に向かって撃った男に、ジョージアが偶然ぶつかってしまった。男はよろけて銃をまた発砲しそうになった。ダッカーが男の顔に凄まじい勢いでハイキックをした。男の手から反動で銃の弾が発砲されたが、弾はうまくそれて通りに面した窓ガラスが粉々に割れた。あたりには人々の悲鳴が響き渡った。
「え?撮影?本物?」
3人の子供たちの隣の席に座っていた若い男性が、大声ですっとんきょうな声を上げた。
「本物だよ!」
幽霊キングのダッカーが叫び返した。
「おお!?」
声にならない声をその若い男性は上げて、いきなり入り口に突進してきた。暴漢2人はその勢いに思わずだじろいだように見えた。
「ここにも敵はいる!今だ、逃げよう!」
ピーターが叫び、3人の子供たちとサファイアは通りを左に向かって走った。
幽霊キングのダッカーは、窓ガラスを粉々にした2人目の男の銃を叩いて床に落とさせた。そして再び華麗なハイキックをお見舞いした。王の子は、無駄に王たる運命に生まれたわけではなかったのだ。幽霊になるまでの間に、それなりに護身術等の訓練をしっかり受けていたのだ。それから他の子たちの後を追ってきた。
お店にいた大人たちは、床に落ちた2丁の銃を素早く回収して、男2人を床に押し倒して捕らえた。
それをジャンプして飛び越えて、よく分からないが、さっきの若い男性も子供達と一緒に店を飛び出してきた。
ああ、我らが颯介のことだ。
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