第10話 何気ない満ち足りた時間
タバコ休憩から戻ると、ちょうど女子先輩組も昼食を終えたところだった。
「私たちは今から自習室に行くけど君らも来る?」
「行きます!」
特にこの後の予定も決まっていなかったので、一緒に着いていくことにした。行く途中、福岡の大学では乗ったことがない大学用のエレベーターを経由したことに、小さな感動を覚えた。
自習室といえば講義室のような部屋をイメージしていたが、実際の大学の自主室は、塾の教室のように質素な白の塗り壁に、丈夫な木のナチュラフローリングの上に机と椅子が六×四で並んでいた。俺らは誰もいない自習室の中央部分を四人で広く占拠すると、みんなで議論し始めた。テーマは出会いの探し方。ここまできて内容が俺の話なのは少々申し訳なかったが、初めはみんなで真剣に話し合った。
広島まで行って夜の街に出かける・ナンパをする・マッチングアプリをしてみるなど。色んな案が出た。けれど話が続くにつれて、緊張もほぐれて雰囲気は緩くなり、後半はそれらの話もしつつ、楽しく雑談していた。
そうして自習室に掛けられた時計を見るともう昼下がりの時間帯だった。俺はうっすらと暮れ始めた日を横目にふと考えていた。もし、何かの縁で自分がこの学校に来ていたのなら、こういった現在があったのかもしれないと。もちろん今の自分からしたらありえない話だし、意味のないことなのだろうけど、こういった『もしも』を考えるのは好きだ。そのくらいこの瞬間は今を忘れさせるだけの温かさがあった。
話もひと段落すると、最初に会った片割れのボブヘアの女子生徒は教授のところに、ユウキくんは学園祭の準備に行き、自習室内は自分と長髪の女子生徒の二人だけになった。
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