第8話 エンカウント
女性局員さんの説明と地図のお陰で、徳山大学には無事に辿り着いた。しかし、ここでも緊急事態が発生する。徳山大に着いてから数分、どれだけ見渡しても人がいないのだ。
人間を求めて校舎付近を歩き回る。気分は異世界ファンタジーの魔族といったところだろうか。しばらく彷徨っていると、ガヤガヤした複数人の声が近づいてきた。大学のサークルの人たちか⁉ と思いきや、出てきたのは地域のスポーツクラブの奥様の方々だった。
違う! もっと若い人間を! なんてとても声に出しては言えないが、内心そんな気持ちだった。
どうしたものかと再び校舎の方に視線を向けると、ちょうど校舎の二階に二人の女子生徒がいるのが見えた。位置的には、ここから正面の中央会館の二階といったところのようだ。
女子生徒を見失わないように駆け足で階段を上がると、そこは食堂になっていた。けれど、イメージしていた食堂とはかけ離れており、カフェテリア方式であっただろうことが窺えるレジ横には、何一つ置かれていない食膳だけがずらりと並んでいた。当然、人間もいない、中はもぬけの殻状態になっていた。さっき見上げた二名の女子学生を除いては。
一目瞭然。ここではむしろ、その二人がイレギュラーなのだと一目でわかる。俺は意を決して二人に話しかけた。
「すみません、この大学でサークルか何か活動しているところはありませんか?」
二人の女子学生は、俺の言葉に動じることなく、唸るように悩んでいる。
「うーん。多分、今は夏休みだからどこも活動していないと思うよ」
ショートボブが特徴的な女子生徒が緩い笑みを浮かべて、お湯を注いだカップ麺を慎重そうにテーブルに運びながら言った。
「そうですか。うーん」
正直困った。この二人しか学生がいないとなると、いよいよ新たな出会いが見込めない。けれど今度のアテはこの二人しかいないのだ。
悩んでいるうちに、今度は後ろ髪を丸く結んだ方が、コンビニで売られている細長いミルクパンを持って立ったまま、言葉を投げかけてきた。
「君は? ここの人?」
「いや、違います。自分は福岡から来ました」
「「えぇ~‼」」
二人は食堂の静寂を突き破るかごとく声で驚愕していた。無理もないだろう。夏休みに訪問してきた男が、いきなり他県から来たと告げたのだから。
「何をしに来たの?」
そんな純粋な質問が投げかけられる。
「面白い出会いがないかなと思って、福岡から出てきました」
「すごっ」、「こんな人見たことがない」など各々口にする。俺も自分で言っていてどうかと思う。こんなアホなことしているのは自分くらいだろう。
話を進めると、二人は自分の一つ年上だった。今日は自習で学校に来ているそう。この二人しか学校にいないのを考えると、きっと勤勉な人たちなのだと思う。
「でも、出会いなら横の広島の方がいいよ。山口より栄えてるし」
「そうなんですか?」
それは意外だった。正直、広島に栄えているイメージなんて持っていなかった。後付けしておくと、これは別に広島を侮辱しているわけではなく、東京と大阪と福岡以外はみな同じ感じといった学の無さから来たものだった。今も強いていうなら、広島風お好み焼きはお腹にたまるってことくらいの認識しか持っていない。
「うーん、でも山口で友達作りたいので、お二人の知り合いで面白い方いませんか?」
正直、かなり無茶苦茶を言っている自覚はあったが、もうなるようになれという勢い任せになっていた。
「面白い人ねぇ、あ! ユウキは?」「いいんじゃない?」二人はスマホを凝視しながら、なにやら話し合っている。
「私、電話してみるわ」
長髪の学生が言うより早く電話をかけていた。
「あ、もしもし、ユウキ? 今暇?」「学校来れる? 今面白い子が来ててさ、ユウキに会いたいって」電話の向こうの声は聞き取れないが、どうやら話はトントン拍子に進んでいるようだ。
「今から来るって」
「マジですか」
ここまで話が上手くいくとは思わなかった。数分後、本当にそれらしき男の子が来た。彼はいかにも人当たりの良さそうな柔い笑みを浮かべていた。見た目は、今トレンドのハーフアップヘア、百八十は優に超えているであろう背丈。福岡でも滅多に見ないタイプの、ガチのイケメンだった。オマケにモデルでもやっているのかってくらいオーラがあった。
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