第1話〜船
三人は船に揺られていた。一人、海で朝ご飯を吐いて餌を撒いている。
この船に乗っているのは船乗りのおじさんと旅行者の三人だけだあった。おじさんは島には近づきたくないといった感じの顔であった。
「ま、まだづがないんおぼぼげぴ」
「兄ちゃん、きちぃんなら喋っちゃならねぇ。めっけぇ吐けな」
針口裕精は船に慣れておらず、船酔いで嘔吐している。彼の顔色はゲーミングPCのように色移りが激しい。
「風が気持ちいいのだ」
帽子とスカートが風に揺れているこの少女は薫田あるじだ。彼女は神に整えられたかのように顔立ちが良く、可愛い。
「針口のゲロで魚が集まるから釣りが楽しい」
人様のゲロで釣りをしている気狂い野郎はヴェニアミンだ。あだ名でニアミンと呼ばれる彼はリンボーのような格好をしている。
おまけに火傷跡が身体中にあり、確実に人を何人か闇に葬っているような風貌だ。
「ニアミン先生も針口も一緒なのはびっくりしたのだ。みんな、この島に用があるのかー?」
男二人に近づくと、胃酸と潮の香りが混ざって嫌な香りがする。そして何故このヴェニアミンという男は平然と隣で釣りをしているのだろうか。神経を疑う。
「あの一件以来だから久しぶり」
「また会うのはびっくりなのだ。アレみたいな事にはならないように…い、祈っておくのだ」
「無駄だと思うよ」
あの一件というのは前作である〈絵画一族のシンメトリー〉を読もう、この三人の関係性が分かるので。
そして島が見えてきた。赤い太陽に照らされた緑が溢れんばかりの島の港には数人の人間がいた。
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