閑話 花葉の儀・憂鬱

前編 花と葉の国

 この日、『葉都』の王である苑葉は、キリキリと胃が痛むのを気づかぬフリをしてその会合に出席した。


 行く先は同盟国である『花都』だ。

 何年も前から沙汰など無かったというのに、何故に今になって会合への招集が掛かるのか。苑葉の胃は数日前から限界を迎えており、すぐにでも穴が開くのではないかと思えるほどに痛みが走っていた。



『花都』との同盟は、一言で言えば「致し方なく」だった。



『花都』は『葉都』よりもさらに南側に位置する国で、その実態は当時より謎に包まれていた。


 中立国であり、外交貿易も鎖国状態。

 そんな、何も分からない国との同盟を何故結んだのか。その頃まだ十代だった苑葉には理解できないことが多すぎた。


 ある時、国同士の友好関係を深めようという名目のもと、交流留学の話がかの国より持ち掛けられた。『葉都』からは苑葉の年の離れた妹である緑黎が、『花都』からは第一王子がそれぞれの国へ迎えられた。


 初めこの話を聞いた緑黎はとても嬉々とした笑顔を見せてくれていたことを、昨日のことように鮮明に憶えている。


 だから————。


 まさか、あのような事態になろうとは、誰も予測などできなかったのだ。

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