第64話 シルさんは素敵な女性
「ん?」
杏子先生は首を傾げる。
「ほら、高校生の時、同級生だった工藤知だよ」
そう言ってアップにしていた髪の毛を下ろした。
「あっ!ともちゃん?えっ!えっ………」
杏子先生は大きく動揺していた。
確かにともちゃんの面影はあるけど高校生の時は華やかさはあまりなかった。文芸部でメガネをかけて髪の毛も下ろしたままだった。いまのシルさんにはとても結びつけるのが難しかった。
「あんずちゃん、変わらずかわいいね」
「うん、ねえ、とも………」
「はい、お時間でーす。次の方どうぞ」
杏子は話をできないままシルさんが同級生の『とも』ということを知った。
「…………」
シルさんは驚きの再会にボーッとしてしまう。
「あの〜………」
くるみが話しかける。
「あっ、ごめんなさい。ボーッとしちゃったね。あっ、かわいい子」
シルさんはちゃんとしなきゃとおもいつつもくるみのかわいさに驚いていた。
「はじめまして。じょうくんと仲良くさせていただいています」
「もしかしてくるみちゃん?」
「えっ!は、はい。」
「じょうくんから聞いてるよ。すごく素敵な女の子だって」
くるみは一気に顔を赤らめた。
まさか知らないところでそんなことを言われているとは思ってもみなかった。
それもシルさんから聞かされるとは思いもよらなかった。
「ありがとうございます。シルさんはキレイで素敵です。わたしもシルさんみたいになりたいです」
「ありがとう。くるみちゃんはいまのままで十分素敵だよ。じょうくんの支えになってあげてね」
くるみにとっては想定外のやり取りだった。
「はい」
そういうと終了を告げる声がかかる。
「次の方どーぞ」
「あなたは声優かもしれないけどわたしは小説家。わたしの方が格上ね」
あかねちゃんはスタートするとそうそうシルさんにくってかかる。
「有名な方なんですね。すごいです」
シルさんは嫌味な言い方ではなく純粋に思ったことを話した。
「そうよ。すごいのよ。だから先輩はわたしがお付き合いするの」
「おつきあいできるといいですね。それだけしっかりされているので相手の方も安心ですね」
「え、う、ん。そうね。その通りよ」
シルさんの天然になす術がないあかねちゃん。
「お時間でーす」
女性陣はみんなシルさんとの握手会を終えた。
ももさんは宣戦布告したのみ。
杏子先生は同級生だったという驚愕の事実。
くるみは真剣に向き合ってくれる素敵な女性。
あかねちゃんは肩透かしにあった気分。
四者四様のシルさんへの印象だった。
間違いなく強敵!
これが全員の認識であった。
そしてもう一つの共通認識は、じょうくんが何も行動を起こさなかったことだ。
「先輩はシルさんていう人に憧れはあっても付き合いたいとかはないのかもしれないと思う」
軍師あかねちゃんは俺の握手会での行動で不審には思わなかったようだ。
「確かにアクションは何もなかったわね」
ももさんも同意する。
「実はシルちゃんてわたしの高校時代の同級生なの」
「ええ!」
みんなが驚く。
「同じクラスだったけどおとなしい子で文芸部の部長だったの。メガネかけて地味な子だったから今の姿は想像できなかったの。シルちゃんがわたしに気づいてくれて」
「他には情報は?」
あかねちゃんがさらなる情報を仕入れようとする。
「うーん、あまり関わらなかったからなぁ。
そうだ。頭は良かったけど両親を亡くして大学諦めたっていうのは有名な話だった」
「頭が良くて地味っ子だった。でもいまは追っかけファンもいる有名な声優さんか。なるほど」
あかねちゃんは分析している。
「あの、わたし、シルさんはいい人だと思います。わたしは好きです」
くるみが驚きの発言をする。
「たしかに素敵な女性ね」
ももさんが同意すると杏子先生もあかねちゃんもそれに続いて同意する。
「わたしはシルさんならじょうくんを取られても仕方ないと思います」
くるみはさらに驚きの発言を繰り返す。
「くるみちゃん、本当に?」
杏子先生が顔をのぞきこみながる確認をする。
「もちろん、じょうくんのことは好きですが
じょうくんがシルさんを選ぶなら応援したいです」
くるみは俺の幸せを本当に願ってくれる女性だ。
「わたしはいや!絶対に嫌!シルさんを蹴落としてでもわたしが彼女になるの」
あかねちゃんは闘志メラメラだ。
「わたしもシルちゃんにも杏子ちゃんにもこの小娘にも負けたくない」
ももさんも知り合いには負けたくないのだろう。
最後まで戦う宣言をする。
「おにいちゃんの話し?わたしもお兄ちゃんと将来結婚するの!」
じんのが状況もわからずに入ってくる。
「でも、選ぶのはじょうくんだから、あとは各人で頑張る。でどうでしょうか?」
くるみはこの話に終止符を打とうとする。
プルプルプル、くるみの携帯が鳴る。
「あっ、じょうくんからだ」
「ごめん、ようやく落ち着いたから合流するけどどこにいる?」
「イベント会場の近くだよ」
「わかった。すぐ近くにいるからそっちに行くね」
「はーい」
俺はみんながシルさんの握手会に参加していたことを知らないふりをしていた。
その後はVSJをみんなで楽しんだ。
プルル、プルル、プルル
俺の携帯が鳴り響く。バイブにし忘れてた。
「ごめん、先乗ってて」
乗り物の列から離れて電話に出る。
知らない番号からだ。
(これだったら最高だ………)
「もしもし...」
俺はドキドキしながら期待をして電話に出た.......
…………………………
あとがき
シルさんイベも大詰めにちかづいてきました♪
新作もそろそろ投稿します!
今週末はガラッと雰囲気が変わりますので
ぜひお付き合いください☆
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます