第52話 未知との関係に光明が。

あれ以来未知さんとは微妙な関係が続く。

赤の他人のように振る舞わられるとやはり

ショックだ。

あの天真爛漫な未知さんを見てしまったら

もう引き返せない。


「未知?」

ふいに下の名前を呼び捨てで読んでみる。

もちろん部室にくるみがいないタイミングでだ。


一瞬顔を赤らめて嬉しそうな反応を見せる。


「先輩なのでさん付けで呼んでください。いい?藍原くん」


「工藤さんと未知さんと未知ならどれがいいですか?」


「どれでも好きに呼んだら」

未知さんは素っ気ない態度を取ろうとする。


「じゃあ、工藤さんで」

未知さんはまさかの『工藤さん』チョイスにびっくりしてしまう。


「あれ?やっぱり工藤さんはいやみたい。じゃあ、未知!」


未知さんは顔を赤らめる。なんでわかりやすい人なんだと思ってしまう。


「未知、どうして顔が赤いの?」


「もう、いじわる………」

未知は少し笑みを浮かべて嬉しそうに言った。


「この前はごめんなさい。言い訳はしたいけどしません。でも本当に未知とキスしたいと思ったし、付き合いたいって思ったんだよ」


未知さんは顔は崩さず嬉しそうに俺の目を見て話を聞いている。


「未知、絶対に許してくれない?」


「ぜーったいに!」

未知さんはそっぽむく表情をする。


「ぜったいに、ぜーったいに?」

俺は未知さんが雪解けし始めたと思いすこし甘えた声を出した。


「じょうくん次第!」

未知さんの声の質も変わってきた。


おれは横から未知さんに抱きついた。


「本当にごめんね、未知」

耳元でささやく。


「うん………」

未知さんはコクッて頷いた。


お互いに心臓がドキドキしているのが伝わり合う。


静けさが部室を包み込む。


………………


目が合う。


お互いの唇が近づく。


ガラガラガラッ!


部室の扉が急に開く。


「もう、急に雨がふってきたよ」

そう言いながら雨で濡れた服をはたきながら

部室にくるみが入ってきた。


俺も未知さんもあわてて距離を取る。


「ここはこんなふうにしてもらっていい?」

未知さんが何事もなかったように振る舞おうと

手元にあった用紙を指差しながら俺に伝える。


「わかりました。さっきと同じようにすればいいですね?」


「そうそう、それでお願い。あらっくるみさん、びしょ濡れじゃない?」


「そうなんですよ。掃除当番で校舎裏まで行ってたら急に雨が降ってきて大変でした」


くるみはこちらを見ずに部室に入ってきたみたいで俺と未知さんのことには気づいていないようだ。


「そうだ、じょうくん。その後あかねちゃんはどうなってるの?」

未知さんの耳がビクッとする。


「毎晩電話がかかってくるよ。2日に一回ぐらいしかででないけどね」


「今後はどうするの?」


「部活にも入るし、有名な作家さんならむげにもできないしね。とりあえずデートしろだの、なんで私はVSJにいけないのとか、いつ行くのだとか、まあたいへんだよ」


「私に気を遣ってくれてるなら結構よ。部に入った欲しいけどそれでじょ…、コホンッ、藍原くんが大変ならあの子は必要ないわ」


「未知…さん、ありがとうございます。

 まあ、俺がしっかりしてれば大丈夫でしょ」


「あなたがしっかりしてないからあんなことになったんでしょ」

未知さんは本音をポロッと出してしまう。

言った言葉は取り消せない。

杏子先生とのことを言われているのは重々承知している。


「もうあんなことにはなりません」


「あんなことってどんなことなの?」

くるみが知りたそうにこちらを眺めている。


「それは言えない……」

おれは口を閉ざす。


「この人、また杏子先生と一夜を過ごそうとしたの」

未知さんが憂さ晴らしかと言わんばかりにくるみに本当のことを伝える。


「えっ!?また?じょうくんはえっちな人が好きなの?」


「いや、好きじゃないし、前もその前も成り行きで不可抗力だったんだよ」


「下半身が裸で?」

未知さんは下半身が裸の状態でで不可抗力はないだろうと言う顔をしている。


「杏子先生と2人で下半身が裸だったの?じょうくん」


「………否定はできません」


「もう!何してるの!先生としちゃったの?」


「してません。誓ってしてません」


「どこまでしたの?」


「言えない………」


「言いなさい」

未知さんがここぞとばかりに追い立てる。


「はい、ズボンとパンツを脱がされました」


「キスは?」

今度はくるみがいう。


「しました………」


「触られた?」


「はい………」


「舐めてもらったの?」


「いえ、そこまでは」


「それ以外は?」


「………」


「全部言わない気なの?藍原くん」

未知さんが冷酷な女看守のような冷たい言葉を投げかける。


「先生のむねを揉みました」


「それだけ?」


「胸を舐めました………」


目を見開く未知さんとくるみ。


「先生のは触ったの?」


「いえ、触ってません」


「本当のこと言いなさい!」

未知さんの声に力が入る。


なんだろう、圧迫尋問を2人から受けているみたいだ。


「本当にそれが最後です」


「嘘ではないようね」

俺の表情を見て未知さんは判断する。


「はい………」


「なんでそんなことになったの?」

くるみが知りたいのはその理由だ。

おれからなのか、先生からなのかが重要みたいだ。


「先生が忘れ物をしてそれを届けに行ったら部屋に上がってって言われて先生のキッチンの戸棚が傾いてたから直してたら後ろからいろいろとされて………。いや、俺が悪い。俺が流されただけだ」


説明しながら言い訳になることを俺は嫌がった。


「くるみさん、もういいじゃない、終わったことはもう終わりで」


「確かにそうですね。わたしも気にしすぎました。ごめんね。じょうくん」


「いや、悪いのは俺だしね」


「あっ!?わたし今日帰らなきゃ!

 施設の子の誕生日会だった」


「くるみ、風邪ひくなよ、まだ外雨降ってるだろ?」


「あっ、置き傘この前持って帰ったばっかりだ」

くるみがこういうヘマをすることは珍しい。


「くるみ、俺の傘つかっていいよ。まだほかにあるから」

そういうとおれはカバンから折りたたみ傘を取り出して渡した。


「ありがとう。じょうくん、たすかる」

くるみは俺から傘を貸してもらえたことが嬉しかったようだ。


笑顔で部室を出て行った。


…………………………


くるみが出て行ってからすぐに雨足が強くなる


ザザザザー、ザザー、ザザザー。

外は結構な雨量だ。



「もう今日は帰りましょう」

未知さんが提案をしてくる。


「そうですね。帰りましょうか」


くるみに傘を貸したことがきっかけで

俺は未知さんの家に上がることになる………



………………


あとがき


昨日はコメントありがとうございました♪

2件もいただけるとうれしいです!


今後もたくさんのコメントお待ちしていまーす☆

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