第49話 新入生が嵐を呼ぶ!?

「やめてください!」


帰り道に公園を通りかかった際に声が聞こえてくる。


「生意気なんだよ!おまえ」


男2人に囲まれている女性が1人いた。


(未知さん?)


後ろ向きだがその女性はうちの高校の制服を着ている。背格好は未知さんだ。


「4度目か………」

また絡まれている未知さんがもう哀れでしかない。


それでも未知さんと話す機会ができることを考えると天の恵みだと思う。


「俺の彼女なんだけど、こいつ」


後ろから近づいて男2人に声をかける。


「ああっ!なんだおまえ」


「だから彼女だっていってんだろうが!」

ここ最近のイライラを爆発させてしまうかのように本気になってしまう。


相手はビビる。


「こっちは2人だぞ!」


「それがなんなんだよ!」


(未知さん、惚れ直してくれるかな)

もちろん打算なことも考えてしまう。


「わかったよ、もういいや、いくぞ」

男2人は立ち去っていった。


(未知さんは俺の後ろ姿はかっこよかったかい?)

男を追っ払って満足げな俺。


男2人が去っていくのを見て振り返る。


(!!)


未知さんじゃない!!

誰だ、この女!


「助けてくれてありがとうございます」


一気に興味を失せてしまった俺は一言だけ。


「いいよ、気をつけなよ」


「はい、お名前を聞いてもいいですか?」


「そんなつもりで助けたわけじゃないから」

俺は歩き始める。


「あっ、待って………」


歩きながら右手を挙げてバイバイと伝えて立ち去った。


(はぁ、なんで未知さんと間違えたんだろうか。確かに未知さんに似て美少女だったけど)


俺は人助けができたと前向きに考えるようにした。


今日は杏子先生にも未知さんにも会わなかった。それが逆に俺の不安をあおる。

会ったとしても気まずいし、何か進展するわけでもない。それでも会ってあの2人に嫌な顔をされる方がまだマシだ。


家に帰ってじんのを寝かしつけたあと

グループLIMEが光る。

未知さんからだ。


「今日はお休みしてごめんなさい。

 明日は出席します。新入生の勧誘日です。

 みなさん、よろしくお願いします」


そうだ、明日は新入生勧誘のイベント日だ。

未知さんとも先生とも会える。

罪悪感とともに少し嬉しさも感じてしまう。


………………………


「こんにちわ。藍原くん」

未知さんは何もなかったかのように淡々と挨拶をする。


「こんにちわ。未知さん」


部室には俺とくるみと未知さんがいる。

今日は授業を1限潰して体育館で各部活が新入生に対して2分ずつPRする。

一年生へのPRの大チャンスである。


「私はこの通り愛想を振りまけないわ。

 発表は2人にまかせていい?」


「そのつもりでしたよ。未知さん」

俺は軽い感じで未知さんに対してジャブを打ってみた。


キリッ、未知さんが一瞬俺をにらみつける。

だめだ、完全にまだ怒っている。


「未知さん、目標は何人ですか?」


「そうね、2人は入って欲しいわ。

 あなたたちも2人の方が気が楽だったでしょ?

 私は1人でも問題ないけど普通の人なら

 1人は辛いって聞くしね」


「じゃあ、今日のこの後のPR発表と放課後の勧誘大会、頑張りましょう」

くるみはくるみ以外で起こっている今の状況を知らない。1人生き生きとして頑張ろうと意気込んでいる。


くるみも何をやらせても優秀だが、未知さんはPR大会で使用する文芸部の紹介PRのパワポ作成がすさまじく上手だった。


未知さんには小説を書く以外にも才能があった。社交性以外は抜群の能力を持っている。


「未知さん、資料作成すごいですね」


「えぇ、わたしもそう思うわ」


自分でもそう思っているんだ、未知さんは。

さすが未知さん、謙遜という言葉を知らない。


「でもね、これくらいのプレゼンでは文芸部に入ろうとする人はいないのよ」


「たしかに文芸部に入ろうと思う人はあまりいなそうですもんね」


「どちらにしても私はもう何もできないからあとはよろしく」


俺たちはプレゼンの出番となり舞台裏に呼ばれた。


前の新聞部が終わりついに文芸部の出番だ。


俺とくるみが壇上に舞台裏から出る。


「よっ!仲良しカップル!」

俺たちが別れたことを知らない野次馬が変な声援を送りつける。早速出鼻を挫かれた。


「文芸部に入れば仲良しカップルが生まれるかも!」

くるみが機転を効かせたあいさつから始めた。


2分間、くるみが中心に話を回した。

さすが元生徒会長だ。表舞台でも全然緊張しないみたいだ。

俺はお飾りだ。まあ、それでいいけどね。


(やっと見つけた。私の王子様)

とある一年生がうるうるとした目で俺を見つめた。おれがそれに気づくことは全くなかった。


「ふぅ、やっぱり舞台で話すのは疲れるね」

くるみはおでこに汗を光らせていた。

くるみでさえも汗をかくほどたいへんだったんだと思う。


「くるみ、ありがとね。助かったよ」


「1人でも入ってくれるといいね。でも私たちも活動ほとんどしてないから同学年みたいなものだね」


「たしかに。優秀な子が入ってきたら俺たちなんかなんでここにいるんですか?って言われそうだな」


「ははっ、そうね。あとは放課後の勧誘大会だね」


勧誘大会は校門から校舎までの桜並木道の両サイドに各クラブが机を出して歩いて帰る新入生にアピールする場である。


勧誘大会ではさすがに未知さんも机の前に並んでくれるとのこと。


「はーい、文芸部でーす!ぜひ小冊子を持って

 帰ってくださーい」

くるみが流れでてくる新入生に大きな声をかける。


「文芸部は美少女が2人もいまーす。眺めるだけでも十分!興味ある方は入ってくださーい」

俺は俺なりの誘い方をしてみた。なぜなら文芸部をPRしても入りたい人なんて少ないからだとわかっているから。


「ちょっと、藍原くん、ふざけた誘い方しないで」

未知さんは本気でにらんでいる。


「ごめんなさい、わかりました。本気出します」

そういうと俺は小冊子を手に持ち通りに出る。

「はーい、文芸部です!この小冊子は漫画みたいに面白いよ。読んでみて!」

そう言いながらテキパキと配り始める。

俺の手にあった小冊子はすぐに渡しきった。


未知さんは少し驚いてこちらを見ていた。

俺は心の中でドヤ顔をしている。


「半分は配ったね。ちょっと休憩」


今度はくるみが通りに出て小冊子を配り始めた。


2人の新入生が机の前に現れた。


「藍原先輩、みーつけた!」


「工藤先輩、好きです!」


かわいい女の子の新入生が嬉しそうに俺の腕をギュッとつかんだ。


目力の強い男の新入生が真剣な眼差しで未知さんに向かって告白をした。


なんだ!これは………



……………………


あとがき


ついに新しい登場人物が現れました!


もうすぐ1章が完結します。゚(゚´Д`゚)゚。


2章とともに新作もスタートしますのでぜひお楽しみにお待ちください☆

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