第24話 シルさんが俺の家にくるの!?

イベント会場を出るとシルさんは俺たちと一緒に

タクシーに乗った。


シルさんの一言目はタクシーの運転手に向かって

「とりあえず出してください」だった。


「ごめんね。むりやり連れてきちゃって。

 お姉さんもびっくりしちゃって

 身体が勝手に動いちゃった」


タクシーに乗って座ったことで俺も少し落ち着いた。

シルさん、俺、じんのの順番で座っている。

シルさんがすぐ隣に座っているので良い香りがする。

俺のドキドキをさらに助長する。


「おれもびっくりしましたけど

 シルさんと、いや、しるくさんと会いたかったので

 会えてうれしかったです」


「ほんとにぃ??」

シルさんは得意の首を傾げて俺の顔をのぞき込んでくる。


「じょうくん、じょう君の家はどこ?」

声の質が少し機械的になった。

おれは少し距離感を感じてぎこちなく答えた。


「本郷町です」


「運転手さん、本郷町に向かってください」

ハキハキとした言葉で行き先を告げる。


「じょうくん、この後予定は?」


「家に帰るだけです」


「じゃあ、おうちまで送るね。

 無理矢理連れてきちゃったの私だし」


おれはどうしてシルさんがあんな行動にでたのか

想像ができなかった。


そしてなぜかいま一緒にタクシーに乗っているかも。


「シルさんはお時間大丈夫なんですか?

 俺んちまで送ってくれて」


「だいじょうぶだよ。今日の仕事はこれで終わりだから

 あとは家に帰るだけなの」


「でも悪いんでどこかで俺たちを降ろしてもらっても...」

おれは少しでもシルさんと長い時間一緒にいたいのに

心とは裏腹なことを言ってしまう。


「じょうくん、私といるのがイヤなの??」

またのぞき込んでくる。

イヤなわけ無いことを知っているのに

この人はわざと聞いている気がする。


「イヤじゃないにきまってるじゃないですか」


「ふふっ、知ってる」

何でも見透かしたように言う言い方と表情と仕草が俺の心を

ぎゅっとわし掴みにする。


そこにはあの素敵な小悪魔がいた。


「ねえ、じょうくん。お隣のかわいい女の子は妹さん?」


「あっ!そうです。妹です。ほら、じんのご挨拶は?」


じんのは急な出来事すぎて追いついていない。

病気のこともあってか人見知りも激しいので

もじもじしている。


「すいません。この子人見知りで」


「じんのちゃん、こんにちは。

 ニャン銃士のシルーだよ」

シルさんはシルーの声でじんのに自己紹介をしてくれた。


「シルー!!シルーだ」

じんのはいっきに顔色を変えてシルさんの方を見る。


「じんのちゃん、はじめまして」

シルーの声のまま続けてくれる。


「シルー、こんにちわ。

 シルー、大好き!」


「じんのちゃん、ありがとう。

 シルーもじんのちゃんもじょうくんも好きだよ」


(!!)

おれは胸をピストルで不意に打たれた。


シルさん、そこで俺の名前いれるなんて

小悪魔過ぎます...


「じんの、このひとはシルさんだよ。

 シルーの声をやっている人だけど

 普段は違う声で話すからね」


「わかった。シルさんも大好き!」


その後もじんのとシルさんがやりとりをしているうちに

自宅についた。


「シルさん、うちに寄っていきませんか?

 タクシー代も出していただいたので

 お茶ぐらい出します」

おれはこのチャンスを逃したくない一心で

シルさんを引き留める。


「う~ん...、じゃあお言葉にあまえちゃおっかな」


「はい。ぜひ」

もちろん心の中ではガッツポーズ。


「え!じょうくん家、こんな大きいの?」


「はい。いろいろ事情があって

 ここにじんのと2人で住んでいます」


「え!ここに2人だけで?」

シルさんの驚く表情を見るのは初めてだった。


「ご両親は?」


「別のところに住んでいます。

 家の中で説明しますね」


「じょうくんが普通の高校生じゃ無いって

 感じてた理由が少しわかった気がする」


そう言いながらシルさんは俺の後ろをついて

家の中に入った。

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