第391話 幽霊に出てきて欲しかった話ー没ネタ
タイ怪談の方に載せようかと思って書いたのですが、あまり怪談らしくないのでこちらで載せてみるネタ。
タイという国は交通事故が多いのです。どれぐらい多いかというと、日本の約4倍。人口自体は日本の半分ぐらいなので、比率としては8倍ぐらいになります。
特に長期休みは発生率が上がるので、新年とソンクランの長期休暇2週間で日本の1年分ぐらいの死者が出るとか。
そんな基礎知識は赴任前講習で教えられていたのですが、それを痛感させられたのはタイに住み始めて1年ほど過ぎた頃。
日曜日に家でゴロゴロしていた私に急に上司から電話がかかってきたのです。電話をとると、開口一番
「Aさんが死んだぞ」
と。
タイ人のAさんは結構年嵩な品質保証部の部長。人心掌握も上手く日本語もしゃべれるので、我が社の中心人物の1人でした。
その彼が、知り合いの葬儀に出るために田舎に帰る途中に事故に遭って亡くなったと。会社の他の若手も何人か同乗していたのですが、そちらはシートベルトをしていたので軽症だったのが不幸中の幸いです。
バタバタと葬儀や何やを終えた頃。何の用だったかは忘れましたが、普段はオフィスにいる人事の女性が珍しく工場に来ていた日のことです。
私と上司と人事の3人が最後まで工場に残っていて、かなり暗くなってきたころ。
「Aさんの幽霊が出たらどうしよう」
なんて可愛い事を言い出す人事。
「幽霊になってても、会社には来ないでしょ」
とドライな上司。まあ確かに、会社で亡くなったならともかく交通事故です。化けて出るなら現場か家族の下かが自然でしょう。
「でも、出てきて欲しいなぁ」
とつぶやく私。
「なんか言いたい事とかあるの?」
「彼がやりかけてたはずの書類のありかを聞きたいんですよ」
タイミング的にかなり大量の書類を更新する必要があったのですね。本来ならAさんがやるはずだったのに、突然亡くなったものだから私が全部やる羽目になっていたのです。Aさんがある程度自分の作業スペースで進めていたはずなので、そのありかを教えてもらえればかなり作業が短縮できるはずなんですが。
それを聞いた人事には、半笑いで
「ネコさんのところには絶対出てこないと思います」
とツッコミまれました。
幽霊まで働かせようとする私が1番怖い人、もいうお話。
でも、創作だともう「幽霊に人権はない」的なのもかなりあるのですよねー。もう一捻りが欲しいところです。
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