第324話 食人パイナップル―モンスター
「パイナップルが食べたいの」
と妻が言い出したのが土曜の夜。
そして、
「スーパーにあった♪」
と丸ごとのパイナップルが買われてきたのが日曜の夕方。
切るのは当然私の役目です。
丸ごとのパイナップルを切った事ある人ってどの程度いるんでしょうね?
でも、丸ごとでも結構売ってるので、そんなにレアでもないのかも。
調べてみたら、硬い部分が斜めに並んで果実に食い込んでいるので、それを上手い事取り除くと食べられる量が増える様子。タイの露店で買った時に斜めに切れ目が入っててオシャレだなぁと思ってたら、実用本位だったらしいです。
動画も見たけど、うまくできる気がしなかったので普通に皮を厚めに剥ぐ方向でやっちゃいましたが。
無事切り終わって片づけに入ったところで、手が妙にヌルヌルしている事に気づきます。
このヌルヌルっぷりはなんか覚えがあるなぁと記憶を検索。
そう、化学の実験の時の――水ナト?
私、溶かされてる!?
学校で習う代表的なアルカリ性である水酸化ナトリウム水溶液はタンパク質を分解します。
なので、薄い溶液をちょっと手に付けると、手の皮膚がちょっと溶けてヌルヌルになるのですね。
ちょっとヌルヌルを楽しんだ後にちゃんと洗えば特に問題ないので、子供向けの実験でたまにやっている事があったりします。
そして、パイナップルにタンパク質分解酵素ブロメラインが含まれていることは有名。
肉を柔らかくするとか言われて酢豚に入って賛否両論だったりしますね。缶詰のパイナップル使ったり、事前に漬けこまずに加熱調理中に直接入れたりしてるのは酵素が失活するんで本当に無意味だと思いますが。
寄り道はさておき、生パイン汁にガッツリ浸された手がヌルヌルするのは酵素で手の皮膚が溶けているとすると理屈は合うわけで。
まあ、水酸化ナトリウム同様、洗えばいいのですけどね。
一晩たった今も、なんだか手がいつもよりスベスベしているような気がします。
調べてみると他にもキウイやパパイヤ、イチジクなどタンパク質分解酵素を持つ果物はあるわけで。
分類学的には結構違う植物で似たような機能があるということは、それなりに利点があって進化してるのだと思われます。……未熟果に多いらしいから、食べられないための防衛策かな?
食虫植物の消化液も、酸だけではなく酵素で溶かすことが多いそうで。
ウツボカズラの捕虫袋なんかは、猿が中の消化液飲むそうですよ。胃薬代わりなんでしょうね。
つまり、パイナップルも食虫植物へと進化する素養はあるという事です(断言)
そこにさらにファンタジー補正を乗せてやれば、食人巨大パイナップルも可能!
とはいえ、巨大な口でバリバリとというタイプはちょっと進化しすぎ。
もうちょっと抑えて、近づいた動物に消化液を浴びせて倒し、さらに消化液をたっぷりかけることで分解を促進。大地の栄養とすることで間接的に食べる形なら多少なりともリアリティがあるかなと。
消化液だけで倒しきれない動物はパイナップルの実でぶん殴る物理攻撃もありかな。リアリティも一緒に撲殺されてますが……
あとは、フクロモモンガがパイナップル好きらしいので、似たような動物が共生してるのもアリかな、なんて。
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