第299話 奇妙な名刺ーガジェット

 明日は展示会に行くので、名刺の印刷をしていました。

 今回は説明員だから、ブースにおいでになった方には我が社の製品を懇切丁寧に説明いたします。

 ……まあ、私だと分かるわけがないのですけれど。


 名刺に関してちょっと調べると、「名刺を重視するのは日本だけ!」的な書き方をされている事が時々あります。

 でも私がタイ赴任中、タイや東南アジアで仕事をしていた範囲では普通に使ってましたし、相手からも沢山いただきました。

 アメリカ出張の時も普通に渡したし、もらったなぁ。

 まあ、こちらが日本企業だからってのもあるかもしれませんが。

 データ的には世界の名刺の8割が日本で消費されてるのは間違いないらしいので、現地企業同士のやり取りでは使ってないのかも。

 これを書く時も、日本語Wikipediaではちょっと情報が物足りなかったので英語Wikipediaを見たのですけど、日本での名刺マナーに関して結構詳しく書いてあって、ちょっと笑ってしまいました。


 ちなみに、名刺って国によって主流のサイズが違うのです。

 日本が一番大きいので、外国で作られた名刺入れを日本で使おうとすると微妙に寸足らずという事も。


 名刺と言えば、昔、『パタリロ!』を読んだ際に「本来の名刺は、細工などを入れた非常に凝ったもの。訪問した時に取次役に渡し、相手がこちらの身分に納得したら返してもらって使いまわすのだ」という豆知識を仕入れていたので、ちょいと調べて確認。


 元々は中国で「訪問したけど不在だった」時に来たことを伝えるために残していた木簡。

 ヨーロッパでは16世紀ドイツで使われ始めたのが最初で、用途は中国と同じく不在時の連絡用。

 その後、18世紀ごろには欧州社交界で凝った造りのが使われていたとのことなので、『パタリロ!』の記述はこの頃のものかと。

 その後は19世紀に写真入りの名刺が流行ったりしつつも、やがて貴族用からビジネスのためのシンプルな印刷物になって今に至ると。

 日本で使うようになったのは江戸時代からで、初期は和紙に手書き。

 幕末に外国人相手の交渉をするようになって家紋などを入れた印刷ものになったとか。


 異世界ファンタジーで名刺を使うシーンは……作中ではあまり描写されないけど、『モンスターハンター』シリーズのギルドカードなんか名刺っぽいか。

 ランクが上がってくると材質も良くなるし、勲章もいっぱい付くし。見せるだけで受け取った側が「おおっ」となるんだろうなぁという雰囲気があります。

 ギルドが冒険者をしっかり管理している世界なら、冒険者同士の自己紹介のシーンでそういうのを描写しても良さそうですよね。

 狩ったドラゴンの皮がちょっと余ったので、名刺に加工して携帯している、とか。


 あるいは、自分の腕前を示すために職人たちが使ってるという文化もあるか。

 金銀細工の職人らが、見栄を張り合うためにどんどん凝った名刺を作り始めるとか。

 紙の形でなくてもいいと考えれば、手のひらサイズの自動人形を名刺として置いてくるとかも。もちろん、文字が書いてあるのではなく喋って案内するわけです。

「私自身が我が主の名刺です。この国最高の人形細工師、ジョン・スミスに御用の方は、ドリー通りの緑の屋根の工房まで」

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