第290話 お茶が先か、ミルクが先か―ガジェット

 姉から、新年のお祝いの一部として紅茶をもらいました。

 台湾土産のお茶をタイ製の象の形をしたポットでいれるというごった煮感が我が家風。

 妻が朝に入れた分の残りをお昼になって注いでくれたので、時間がたってるからかなり渋いんじゃないのかなーと思いつつすすったのですが。朝に最初に飲んだのよりは若干濃くなっていますが、渋くて飲めないなんてことはなく。

 良いお茶は違うなぁと感心させられました。


 この時はストレートで飲んでいたのですけど、お茶の本場である英国ではミルクを入れるのが普通。

 そのやり方にもこだわりがあるので、英国人はお茶をミルクに入れるべきかミルクをお茶に入れるべきかで論争できるのです。いや、マジで。


 『1984年』のジョージ・オーウェルが紅茶に関するエッセイ『一杯のおいしい紅茶』を書いています。カクヨムで無いのでリンクは貼れませんが、「一杯のおいしい紅茶 open shelf」でググれば無料で読めるはず。訳者の方に感謝。

 使うポットの材質、茶葉の量、カップの種類……そして、ミルクは乳脂を抜いたものを紅茶の後に入れるべきだと熱弁しています。後からミルクを入れる形じゃないと、ミルクを丁度いい量に調整できないというのがその理由。


 一方、このオーウェルのエッセイを受け、彼の生誕100年に当たる2003年にイギリス王立化学会が"How to make a Perfect Cup of Tea"というリリースを出しています。

 こちらでは、先にカップにミルクを入れておき、そこにお茶を注ぐようにと書かれています。

 これは、牛乳の乳タンパクが75℃以上になると変性が起こり、悪臭のもとになるのが理由。


 また、国際標準化機構という色々なものの規格を決める国際機関で、英国標準協会が中心となってISO 3103という紅茶の入れ方を規定しています。

 こちらはミルクは茶の後でも前でもいいのですけれど、『茶の温度が65-80℃である場合、ミルクは茶を注いだ後に入れるのが望ましい。』という一文が補足されています。

 要するに、お茶がある程度冷えているなら、お茶にミルクを入れても温度が上がりすぎないので量が調整しやすくて良いというオーウェルの主張が生きてくるわけですね。

 偉い化学者たちが真面目に紅茶の入れ方を議論したのが面白かったのか、英国標準協会は1999年にイグノーベル賞を受賞しています。


 こういう、ちょっとしたこだわりを突き詰めた話というのもキャラクターを見せる話としては面白いですね。

 あまり長々と書くものではありませんが、長編の1エピソードなり、番外編なりでは使えると思います。

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