第265話 雲海ーストーリー

 妻が「これ、タイの写真なんだって」と友達のFacebookを見せてくれました。

 綺麗に刈られた牧草地に、石を埋めて作った道が伸びていて、なんだかアルプスっぽい雰囲気。

 「これ、どこ? なんだか涼しそうだけど」

 「えーっと、チェンライだって」

 チェンライ県はタイの中でも一番北。タイは暖かい国ですが北の方は山岳地帯なので意外と冷えるところもあります。


 実は私、チェンライ県には行ったことがあります。

 私がタイに赴任した直後、交代で日本に戻る先輩が

「雲海を見たいんだよね」

 ということで、プーチーファーというラオスとの国境にある山にお付き合い。


 近くのホテルに泊まり、暗いうちから軽く登山。山頂近くの広場が有名スポットなんですね。

 雲海が見れるかどうかは運次第というにも関わらず、結構な数の観光客がひしめいている状況でした。


 日の出が近づくと、山際から漏れる光に照らされて、雲の海がぼんやりと眼下に広がります。

 所々から山が顔を出していて、確かに海と島っぽい感じ。

 雲の海に半ば飲まれるような斜面にもちらほらと家が建っているのが見えます。

 こっちから見るときれいだけど、あの辺りは「霧がひどい」って感覚なんだろうなぁとか考えてみたり。

 ちなみに、山頂が国境なので雲の海に飲まれている辺りは外国なのです。これも日本ではあまり無い感覚。

 東の方は明るくなってきていますが、西の方はまだ星が見える程度。星空と雲海の組み合わせも幻想的。


 やがて、雲海の向こうから太陽が上がってきます。

 日の出前の薄明とはまた違い、はっきりと見えるようになった雲海といったら。

 そして、暗いうちはあまりよく見えていなかったのですが、広場からだと特徴的な形の山頂が東の方に見えるのですね。

 山頂は切り立った崖のようになっていて、それが空を指さしているように見えるのがプーチーファー(天を指す山)という名の語源なんだとか。

 顔を出したばかりの太陽と同じ方向にあるので、実に映える写真が撮れます。


 せっかく良いものを見たのに、半ば忘れかけていたのでとりあえず記録。まあ、写真はちゃんと残ってますけどね。

 雲海が見れる条件としては、湿度は高いが雲は少なく、よく冷えた早朝の山間部あるいは盆地になる様子。

 寒い山間部を移動するようなシチュエーションを書くときに、ちょっと使えるといいなぁと思います。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る