第227話 古い機械ーガジェット
私の仕事の都合上、自分の作った製品の特性を調べるために色々な装置を触らないといけません。
その中でも、ひときわ苦手な装置がありました。
ざっくり言うと『9つのダイヤルとつまみをガチャガチャ回してメーターがゼロになるよう調整し、その時のダイヤルの値を記録する』ということを2回やってその差分から特性を算出する装置。
言葉で言うとそこまででもないのですが、メーターの値に直接影響するつまみがかなり敏感で、ちょっと動かすだけで大きく針が振れたり、ダイヤルを正しい順序で回していかないとダメだったりとかなり手間のかかる装置です。
三十年前の装置を使ってるからであって、今最新の装置を買えば全部機械がオートでやって特性の算出まで済ませてくれるんですが……予算がつかないとどうしようもないわけで。
最初は出来る人に教わったうえで、丸一日かけてやっと測定が終わるレベルだったのです。
でも、どのダイヤルをどう回せばどう変化するのかが理解できたので、2回目は半日程度。
さらに、つまみをごくわずかな角度ずつ回していくテクニックを身につけて、3回目の今回は1時間。
段々自分の手際が良くなるのが実感でき、苦手感を払拭。
便利ではないけれど、触っていると楽しい機械になりました。
SFで考えても、全部AIにやらせるのより、たくさんのスイッチとかを自分でいじってるちょっとレトロな機械の方が操作者のプロっぽさは上だなぁと思うのですよ。AIだと、結局誰でも同じことが出来ちゃうでしょ、的な。
まあ、リアルの現状では生成AIに上手いこと欲しいイラスト出力させるにもコツがあるみたいで、誰でも同じ結果を得られるとまでは言えないみたいですけどね。
ユーザーインターフェイスが便利になっていくのは使用者が増えてからということが多いので、使用者がまだ少ない、試作品とかごく限られたプロしか使わないマシンというのは多少不便な方がリアリティがあるのではないか、なんてことも考えます。
あまり機械の細かい操作ばかり書いても読者に分かりづらく、作者の自己満足になりかねないですけど、上手く使えばキャラのプロらしさ(あるいは、逆に上手くできない事による素人らしさ)を表現できるツールになるのではないかなと。
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