第223話 ダッパ―モンスター
「くっそ! 硬いぞこいつら」
戦士が思い切り切りつけても、敵の巨漢にはあまり応えていないらしい。
大男にカエルと亀を混ぜたような見た目で、身体の要所が甲羅で覆われている。
物理攻撃で突破するのは時間がかかりそうだ。
見た目からして、電気系が効くだろうとあたりをつけ、指示を飛ばす。
「電撃の魔法を!」
普段なら、魔法使いがすぐさま呪文の詠唱を始めるはずだ。
しかし、その声が聞こえない。
姿すら見えない。
そんな時、視界の上の方でちらりと何かが動いた。
カエルと亀を混ぜたような、しかし子供ぐらいのサイズの亜人が天井に張り付いている。
そいつが、長い片腕を伸ばして魔法使いの喉をひっつかみ、ぶら下げているのだ。
あれでは呪文どころか、悲鳴もあげられまい。
――ダンジョンの中で、前方を警戒しない奴はいない。足元の警戒は、盗賊の常識だ。なれた連中なら、後ろにも気を遣う。
――でも、あんたらがこの辺で冒険するつもりなら、もう一つ。上にも気を付けた方が良い。
そういえば酒場でそんな話を聞いていた事を、今更ながら思い出した。
※※※
人間、思わぬ方向からの攻撃には弱いものです。
特に上下方向はついつい2次元で考えがちな人間にとって死角になりやすいもの。
しかし、上でも書いたようにダンジョン内では罠への対応として床への警戒は常識レベル。
そうなると、上から攻撃してくるモンスターの出番になるわけで。
もちろん、鳥や蝙蝠のような飛行モンスターを使ってもいいのですが、ダンジョンの中なら壁を歩いてくるほうが面白いかなと、最初はオラウータンの魔改造版で考えていたのです。
ジャングルからダンジョンに進出したイメージで、壁や天井に張り付いて長い手を伸ばして攻撃してくる亜人系モンスター。
しかし、手が長いというところからふと思い出したのが河童。
河童のマイナーな特徴として、両腕が繋がっていて片手だけを長く伸ばせるというのがあるのですね。
そして、河童といえば相撲好き。
大型相撲取り体型の個体が壁役として敵前衛を引きつけ、天井を回り込んだ小型長射程の個体が後衛を崩していく。そんないやらしい戦術を
名称としては、カワ+ワッパでカッパなので、ダンジョン+ワッパでダッパかなと。
河童の目立つ特徴である頭の皿をどうするかでまだ迷い中。
面白い弱点になるのですけど、天井に張り付いた時点で皿の水がこぼれますよね……。
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