第196話 ポリオキシジェンーガジェット
「ポリフェノールは身体にいい」と最初に聞いた時、すでに化学を知っていた私はそれを素直に信じられませんでした。
多くの方にはポリフェノールは『ポリフェノール』という一単語でしょうけれど、化学を知る者にとっては『ポリ』+『フェノール』なんですね。
ポリというのは、たくさんつながっている事を指す接頭語です。
例えば、ポリエチレンはエチレンがたくさんつながっているからポリエチレン。
ペットボトルのペットもポリエチレンテレフタレートの略。
プラスチックの多くが『ポリ〇〇』の名前を持っています。
つまり、ポリフェノールはフェノールがたくさんつながったもの
フェノールは一部医療に使われることもありますが、毒性もあって決して体にいいものではありません。
そして、フェノールがたくさんつながったものとしてはフェノール樹脂があります。ベークライトという商品名でも知られる、人類が最初に手にした合成プラスチック。
ポリフェノールの名を冠するにふさわしい物質なのですが……体に良い効果は期待できません。もろに工業用のプラスチックですし。
実際には、ポリフェノールはフェノールっぽい構造が複数含まれている植物成分の総称として使われています。プラスチックではないので、食べても安心。そして、総称なので一つのものを指しているわけではなく、
カテキン、アントシアニン、タンニン、イソフラボン、クロロゲン酸、セサミン、クルクミン、クマリンなどなど
ポリフェノールとして話題になる前から体にいいと言われていた成分がいくつも含まれているわけで。
ここまで調べて、やっと「まあ、そりゃ体にいいだろうね」と納得したわけです。
ポリ○○は世の中にたくさんあるのですが、水もこうなるのではないか、と言われていた時期があります。つまり、ポリウォーターですね。
水を細いガラスの管に通すと粘度や沸点が上がっていて、これはもしかして水分子同士がくっついているのでは?、と思われたわけです。そして、水分子同士がくっつくのだとすると、このポリウォーターが他の水に入るとその水全部がポリウォーターになる可能性もある。もしそうなると、世界中の水の性質が変わってしまうので、ほとんどの生物が生きていけないかも……
なんて心配は杞憂でした。実のところ、ガラス管を通る時に不純物が溶けただけだったので。
しかし、水分子同士が仮にくっつくとしたら、実際には水素原子が外れて酸素原子が直鎖状に並ぶ形になるはず。つまりポリウォーターではなく、ポリオキシジェン。
酸素でなく窒素だと窒素だけで繋がったポリ窒素が実際に作られているのですよね。すごく不安定なので、理論上は他の爆薬の5倍以上の爆発力があるはずだとか。となると、ポリオキシジェンも同様に高い爆発力があると考えられます。
さらにポリウォーターで心配された、他の同種の物を取り込んでいく事が起こった場合、空気中の酸素が全部なくなって危険な爆薬が地球を覆いつくす事に……
そんなことを企む宇宙人の陰謀、とかで一本どうでしょうね。
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