第179話 ポーション・スフィアーガジェット

 伏線は張られていたのです。

 土曜日だったか日曜日だったかは記憶が曖昧ですが、親子3人でスーパーに行った時に妻が一つの商品に目を付けました。

「これとイクラって何が違うの?」

 妻が指していたのは筋子。

「鮭から取った卵の塊のままのが筋子で、バラバラにしたのがイクラだよ。手間がかかるからイクラの方が高くなるね」

 と説明し、その時はスルーして終わったのですが。

 昨日の夜

「安くなってたから、買ってきた」

 と生筋子を差し出されました。見事な伏線回収。


 まあそんなわけで、平日の朝っぱらから筋子をほぐしてイクラにする作業を初体験してました。ググって出てきた手順と動画一つで何とかなるもんですね。仕事に行く関係上、つけ時間の調整が出来ないのが心配ですが。


 イクラは人工のイクラがあって、注意しないといけないというのを子供の頃某グルメ漫画で読んで覚えていたのですが、今のところ天然イクラの方が価格が下がったので人工イクラはほぼ流通していないとのこと。

 一応調べてみたら天然イクラよりも安い人工イクラが見つけられましたが、そこまで大きな差ではないのでバレるリスク負ってまで使わないだろうなぁという感じでした。

 イクラだと明言せずに、数粒だけ乗せる(=消費量が少ないから高くなってしまう)ようなところだと使うかも?


 ただ、この人工イクラを作る技術自体は『中身がイクラ風である必要はない』わけで。好きな味のが作れるキットが市販されていたりします。きな粉味とか、抹茶味とか、トマトジュースとか……。

 noteやYoutubeでも色々な作例がみつかります。抹茶味の人工イクラというとちょっとイメージがよろしくないので、球体を表すスフィアという語を使うことが多い様子。


 何でも入れられるとなると、異世界ファンタジーとしては飲んで効果のある液体、つまりポーションを入れたくなります。

 多くのゲームでポーションはガラス瓶に入っている感じの扱いが多いですが、アレだと飲むのに片手で瓶を持たないといけないわけです。

 敵の攻撃が痛かったから、ちょっと剣を鞘にしまって、ポーション瓶を取り出して飲んで……やってる間にもう一撃くらいそうですよね。

 ポーション・スフィアなら、あらかじめ口の中に含んでおいて、効果が欲しい時にかみつぶすことで武器を持ったままでも即座に飲むことが可能。

 さらに、飲み終わった後も快適。戦闘中に、さっき飲み捨てたポーションの空瓶を踏んですっころぶ、なんて間抜けなことも瓶タイプだとあり得るわけですが、ポーション・スフィアなら皆無。

 やったぜ、ポーション界の大革命だ!


 ……まあ、ポーション・スフィア自体が柔らかいので普段持ち運ぶのには結局瓶が必要ですけどね。

 口に含んでる状態の時にちょっとしたショックで壊れてしまい、全然いらない時にポーションの効果が発揮されたり、なんて無駄遣いもおきそう。

 口に含んだはいいけど、使わなかったときにどうするのかってところもありますし……一旦吐き出したものをもう一回食べたくないもんね。

 なにより、口に含んだままだと喋るのが難しそう。


魔王「ついにここまで来たか、勇者よ!」

勇者「……」

魔王「なんで口をモゴモゴさせて黙ってんの?」

勇者「(しゃべるとポーション・スフィアが割れちゃいそうなんだよ!)」

 実は、昔のゲームの定番である無口勇者様は『力尽きそうな時に飲むと教会に転移するポーション』のスフィアをずっと口に含んでいた、なんて設定もあり得るのか……カッコ悪いな(笑)

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