第145話 生成系AIと著作権ー創作論
カクヨム内のある方の作品で、『既存文章作品の筋書きは変えず、表現を生成系AIに書かせることで著作権侵害の訴えを回避できる』という趣旨の主張と実行がされているのを見てちょっと引っかかったので思う事をつらつらと。
現状では日本での判例は無いと思いますが、文化庁と内閣府がある程度の見解を2023年の5月に出しておりまして。
ざっとまとめると、
・AIを開発し学習させる段階で他人の著作物を許可なくAIに覚え込ませるのはある程度OK
・AIに生成させ、出てきたものを利用する段階では普通の著作権侵害と同様に考えますよ
という内容。
著作権そのものは、『思想又は感情を創作的に表現した著作物』を保護するものとされていますので、文章表現の枝葉末節を変えても、筋書きがそのままではアウトと思われます。
例えば今年の芥川賞受賞作の語尾だけ変えて勝手に販売する、なんて許されていい訳が無いですよね。
単なるデータや、アイデアのレベルでは著作権が認められない事になっているので、
このエッセイで言うと『第143話 ファシネイティング・レパード』や『第1話 永遠と一日だけ』とかなら、利用されても大丈夫だろうと思われます。
『第121話 異世界転生前に、許可証申請をお忘れなく』の掌編ストーリーを、筋書き変えないまま文章量ちょっと増やして、だとかなりアウト寄りになるはず。
じゃあ、他人の作品に自作で全く触れてはいけないのかというと、そんな事はなく。
引用としてちゃんと分かるようにしたうえで、妥当な範囲でやるなら、わざわざ許可をとらなくてもOK。
むしろ、この時に(AIにしろ人の手にしろ)著作者の許可を得ない勝手な改変を加える事は同一性保持権の侵害になるリスクがあります。
怖いのは生成系AIを使うことで知らないうちに著作権侵害をしかねないことですね。
文化庁と内閣府の見解を読んでも、AIの生成物が既存の著作物と似ていたり、明らかにそのパクリだとわかるような場合は損害賠償・差止請求に限らず、刑事罰の対象にもなるとされています。
データベースが十分大きければ既存作品の丸かぶりなんてことはまず起きないと思いますが、データベースが小さい場合は可能性が高まります。
千の作品を切り貼りすれば個々の作品の特色はほとんど見えなくなるでしょうけど、二,三の作品の切り貼りだと元の作品が分かっちゃうという話。
単に「SF作品書いて」ぐらいなら多分大丈夫ですけど、「AとBとCとDと……の要素を入れたSF作品を書いて」などのように制限を増やしすぎてしまうとデータベースの使える部分が小さくなって、危ない結果が出やすいのではないかな、と思います。
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