第131話 罪ある黄金ーガジェット

 人類にとって、人類はどこから来たのかは非常に重要な命題です。

 一般的には進化論と化石記録で概ね説明出来ているんですが、それを認めたくない人が時折

「進化論は間違っている! 真実はこうだ!」

 と主張していたりします。この手の主張は宗教ベースだったりトンデモベースだったりでいくつかパターンがあります。

 その中の1パターンが宇宙人説。宇宙人が猿を改造して人間を作ったんだ、的な主張ですね。

 この宇宙人説の有名人にゼカリア・シッチンが居ます。

 彼の主張を雑にまとめると

『黄金が欲しくて地球にやってきた宇宙人が、金鉱で働く労働者として猿を遺伝子改造して作ったのが人間なんだよ!』

 というお話。

 ご本人は古代メソポタミア文明のシュメール語の文献を解読して分かったことだと主張してますが、翻訳精度も低く、バビロニア神話への理解も足りていない(あるいはわざと無視している)と突っ込まれまくりです。


 で、そういう真っ当なツッコミ以外にも、考えてみると妙な点は多いわけで。


 そもそも黄金は地上の比較的回収しやすい所に加工しやすい状態であるので古代から使われてきたという歴史があるわけで。

 もし私が黄金を得るために地球に来た宇宙人なら、そういう回収しやすい所から手を付けます。


 また、黄金を得るという目的に対して、猿を遺伝子改造するって手法がおかしいなと。

 いろんな道具が使えるのは人間の利点ではありますが、道具を与えなきゃいけないし、それを使うまでの教育も必要だし、知恵をつけたら知恵をつけたで欲が強いから反乱しかねないし……自然に黄金を回収する生態の生き物の方が良いよねと。

 例えばウルトラ怪獣のゴルドンみたいに地中を掘り進んで黄金を食べて体内に蓄える生物。これを地球に放った後、しばらくして回収して金を取り出せば、圧倒的高効率です。


 ですがまぁ、「あり得ないよ」で終わるのは創作的には面白くないので、それをあり得るに変えるにはどうすればいいかなと考えてみるわけです。


 目的が「黄金を得る」だからおかしくなるので、そこを少しずらせばいい。

 実は、彼らが得たかった『黄金』は我々の知る黄金とは別のものなのではないか。

 欲の皮が突っ張った知恵ある人間も、そういう生物を作る必要があったのではないか。


 罪人から『黄金』を得る技術を開発した宇宙人。

 しかし、いかに罪人とはいえ同族を資源扱いするのはあまりに倫理的な問題がある。

 ならば、同族に似てはいても違う罪人を作ろう。

 故郷から離れた、生体素材に事欠かない惑星を舞台にし、知恵を持ち欲にまみれた生物を繫栄させる。

 互いに罪を犯しあうその生物を、時折間引いて『黄金』を得ればいい……


 うむ、中々私好みに邪悪な感じになってきました。

 そして、『罪人』と『黄金』と言えばアレがあったな……

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