第44話 這い寄る迷宮-モンスター

 モンスターを倒すとお金が手に入る。

 ドラゴンクエストの時代からのお約束であると共に、大いなる謎でもあります。

 なぜモンスターたちが、人間のお金を待っているのか?


 え、昨日もこの文を読んだ?

 ここからが違うんですよ。


 倒してお金が手に入っても全く不思議でないモンスターというのもいます。その最も古い一例が、クリーピングコイン。

 Wizardryシリーズ原産の、和訳するなら『這い寄るコイン』とでもなるモンスター。誰かが貨幣に魔法をかけてモンスター化したのだ、とされている事が多い感じです。

 元々が貨幣なら、倒して貨幣が手に入るのは当たり前。このモンスター、やたら数が出てきて仲間も呼ぶけれど、HPも低いしブレス攻撃のダメージは0だし、お金と経験点は多めだしと美味しい稼ぎになるモンスターです。

 しかし、こうまで美味しいと逆に不思議になってきませんか?

 クリーピングコインを使った魔法使いは何でわざわざ冒険者にとってメリットだらけのモンスターを作成してばら撒いているのか?

 そこには何か、単純にモンスターを増やすのとは違う遠大な目的があるんじゃないか。そんな事を考えました。


 まず、一枚一枚コインをモンスター化させるのは大変なので、そこを自動化。

 ダンジョン内にうすーく霧状の魔法生物が充満していて、特定種類のコインの側に集まります。そして、誰かがコインに触ったところで実体化。コインを取り込んだ透明なスライムになるので、遠目にはコインが動くように見える仕組み。魔法生物は運の悪い誰かから魔力を吸い取り、増殖します。

 倒されると魔法生物自体は霧に戻ってまたダンジョン内を漂います。コインは戦利品として倒した人のものになり、街に持ち帰って使われる……のですが、仕組み上、ごくわずかな魔法生物がコインのそばに残っています。

 数枚なら大した事はなくても、何十枚何百枚と集まるとその量はスライム化するのに十分になり、街中で突然襲われる人がでる。

 この時襲われるのは、ダンジョン内に入って戦えるような人だけではなく、普通の商人なども含まれるわけで、通常よりも被害が出やすくなります。

 そして被害にあった人の分だけ魔法生物が増殖し……街に出回っているコインの枚数にも寄りますが、街を丸々一つ飲み込みダンジョン化してしまう事すら可能、としておきましょう。

 こうして広がったダンジョンに、また別の街から冒険者がやってきて……

 どうやって止めるんだろ。

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