第24話 謎の香辛料ナスピリ-ガジェット

 大学生のお昼といえば学生食堂と相場が決まっています。私の通った大学でも、周辺の店よりは安いのでよく使っていました。

 そういう訳で、後輩と食堂の列に並んでいた時のこと。

「ネコさん、ナスピリってなんすか?」

 食堂のノボリに、確かにナスピリの文字があるのを見て、私は後輩に答えました。

「東南アジア、確かマレーシアの調味料だよ。今年のヌーベル・キュイジーヌのコンテストでトップになったフランス人シェフが使った事で有名になってね。某巨大掲示板の料理板でも次に来る調味料として今話題になってるんだ。それで丼物を仕立てるとは、学生食堂の料理人にかなり新しいもの好きが居るようだね」

「へえ。じゃあ、辛って書いてあるのは何です?」

「ナスピリは東南アジア系の例に漏れず、結構スパイシーらしいからね。馴染みがない食材だから、うっかり苦手な人が頼まないように明記したんだろう」

「なるほど。俺は辛いの平気だから、頼んでみようかな」

「……言っとくけど、嘘だからね」


 おおむねお気付きでしょうが、食堂のノボリに書いてあった品名は『ナスピリ辛丼』。ナスをピリ辛に炒めたものをご飯に乗せた丼でした。

 単語の切れ目を間違えた、いわゆるぎなた読みで誕生した『ナスピリ』なる謎単語に、即興でそれらしい話をでっち上げたという思い出。

 わりとらしい感じはあるので、地名を置き換えて異世界ファンタジーならそのまま使えるかな、と。タマゴノキの果実とチリチリの実を炒め合わせた調味料で、そのままライスにかけても、他の料理に使っても美味しくいただけます。


 ぎなた読みは色々怪しい単語が生み出せるので、名付けに困った時にも使えて便利ですね。ゴクドーくん漫遊記シリーズなんかはこれが非常に上手かったのを覚えています。

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