第4話
チラホラと「もう満タンになっちまったー」とか「難しいよ」「ホントそれ~」などといった声が聞こえる。
皆苦戦しているようだけど、それは魔力を込める量の調整に苦戦しているだけだ。それに引き換えわたしは、そもそも魔力操作ができないんですけど!
え、まって本当にどうしよう……。魔力操作ができないってことは、魔方陣の起動もできないんじゃない?そうなると魔術を使って元の世界に帰るっていう計画がおじゃんになっちゃうよ!!
お、落ち着けわたし。いきなり初めてのことができるはずがないよね。何事も練習が大事だって、親友の夏織ちゃんも言ってたし。
それに、中身は置いておいてこの体は美紀ちゃんのものだ。美紀ちゃんができて今のわたしにできないはずはない!よし!
気を取り直して魔力のこもった魔石を見つめる。
両手でぎゅぅと握りしめ、もう一度念のようなものを送る。
魔力~、魔力よぉ。いい子だからわたしの言うことを聞いて~。
…………変化なし。あれぇ??
うんともすんとも言わない。ひょっとしなくてもわたし、才能ない?
うぅ、こうなったら最後の手段……
「せ、先生、どうしてもうまく魔力が扱えないんですけど……何か、コツとかないですか……?」
必殺、先生に質問!!
こんな初歩の初歩と思われることを聞くと色々と怪しまれちゃうかもと思ってたけど、そんなこと言ってる場合じゃないよね!少なくとも現状魔術以外で帰れる可能性はゼロに近いから、少なくとも魔術が使えなければ本当に困る。
なので、恥を忍んで先生に教えを乞うしかないと思う。むしろ、先生なんだからきっちり教育してもらわなきゃね。
「チッ、面倒だな。魔力なしのお前にはこの科目関係ないだろ。勝手にやってろ。むしろ、練習用の魔石を用意したことに感謝するんだな。」
おぉっとぉ??これは教師としてあるまじき態度では?
クラスメイトだけじゃなくて、先生までいじめに加担してるの?それでも教師なの?!信じらんない……。
先生の言葉が聞こえたのか、わたしの席に近い何人かがクスクスとこちらを馬鹿にしたように笑う。
むっかつくぅぅ!!なーにが魔力なしのくせに、よ!だから何なの?!魔力がなくたって、魔術は使えるってこれまでの研究でわかってるんだからね!お昼に読んだ本に書いてあったわ。つまり、魔力なしのわたしでも魔力操作はできるはず。この科目に関係ないなんて言いすぎよ!
むぅ、こんな状況じゃこの先生は頼りにならない……。クラスメイトもこれまでの美紀ちゃんへの態度を見る限り、助けてくれるとは思えないし。直矢君なら教えてくれるかもだけど、彼とわたしの席は随分と離れている。さっきの会話も聞こえていないようで、すぐ近くの席の友達と話しながら練習をしているようだ。彼にも頼れないよね。
自力でどうにかしなくちゃダメ、か……。
手の中にある魔石を見つめる。さっきと変わらず変化する気配は感じられない。
再び握りこむ。握りこんで数十秒、手を開く。
変化はない。
そうだ!教科書ならコツか何か書いてあるかもしれない。
机の端によけていた教科書を中央へ寄せ、パラパラと開く。初めの方のページ、魔力操作について。
魔力は親からの遺伝による影響が強く、後天的に魔力量が急増することは少ない。親の魔力量が多ければ子も多く、逆に少なければ子も少なくなる傾向がある。
稀に両親の魔力量と釣り合わない場合もあるが、それは祖父母、もしくは曽祖父母の魔力量の影響である。それ以前の祖先の影響があるかは不明。
殆どの場合4~5歳程度で体内の魔力の感知ができるようになるが、魔力量が少ないと遅れる傾向がある。
魔力操作を行うにはまず魔力を認知する必要があるため、魔力操作の訓練は魔力感知が発現してからでなければならない。
って……魔力操作のためにはまず大前提として魔力を認知しなきゃダメなの?!じゃあわたしには無理じゃん!!
美紀ちゃんならともかく、わたしは一度も魔力を認識してないよ!?家でも特に魔力を使ってそうなものには触ってないし、学校に来るまでも勿論何事もなく安全に通学できた。学校でも正直わたしの通っていた西桜坂高校と大差はなかった。ただわたしの知ってる普通の一般教科に加えて、魔術学と魔力学があっただけ。図書室も特別そうなものはなく、わたしがイメージする図書室そのものだった。
あれ、もっと身近に魔術がたくさん使われてるのかと思ってたけど、そこまで多くはないのかな?
と、ともかく、魔力操作をするにはまず魔力を感知するところからだね。でも、どうやって?
少ないけど、わたしの様な魔力がない人もいるはず。そんな人はどうしてるんだろう。
もう少し先のページを見てみる。
魔力操作の訓練の第一段階として、最初に外部から魔力を流してもらう、もしくは体内の魔力を放出することから始める。多くの場合は体を動かすことと同様に、魔力感知と同時にある程度魔力を動かすことができる。なので、空の魔石などの様な魔力を受け止めるものを用意し、魔力を動かす、ということから始める。
これらとは別に、魔力感知をしても魔力を全く動かせない場合がある。この場合は、外部から魔力を流してもらうことで魔力の動きを感じ取り、その動きを真似する形で魔力の動かし方を学んでいく。
これだ!!
きっと魔力なしの人は誰かに協力してもらって練習するんだ。大抵は、親や兄弟に協力してもらうのかな?
美紀ちゃんの両親は仕事で忙しいみたいだし、兄弟は居ないっぽかった。となると誰にも協力してもらえず、今のわたしのように魔力操作ができない可能性もある。
なら、まずは協力者を得るところから始めなくちゃ。
美紀ちゃんのためにも、わたしのためにも。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます