大翔が鞄からスマートフォンを取り出した。何度かタップをして、見せてくれる。


「オレのブクマ欄なんすけど。わりと大量なんで、下おりてってください」


 示されたところを見ると、彼の言う通りいくつかのURLが羅列されていた。海外サッカーチームのホームページや、ゲームの攻略サイト。洋服の通販サイトから大型ネットショッピングサイトまであった。


「趣味がたくさんあっていいね」


 微笑ましく思いながら視線を下ろしていくと――


「ありましたか。多分あると思ったっす」


 自分のブックマークだと言って見せてくれた大翔が、私が言葉を失った理由を「多分ある」と推測した。小さくため息を吐いて、スマートフォンを自分に向ける。

 質のいいソファタイプの椅子の背に寄り掛かり、スマートフォンを持たない手でもう片方の腕を抱き寄せるような仕草を見せた。


「あー、やっぱあった」

「……どういう……?」


 やっとのことで声を絞り出した私を見て、大翔は苦い顔をする。今私が見たのは、不気味なほどに文字化けしたブックマーク。


「何回消しても勝手にブクマされてるんすよ。ページが消えてるはずの闇掲示板が」


 ねぇお姉さん、と大翔は続ける。


「やめられたって言ってもいいんすかね。オレ」


 ――ハァ。と、小さな息が耳元で聞こえた気がした。



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