・大翔
浜松インターで降りて、浜松駅へと向かった。落ち合ったのはアクトシティ浜松。ホテルオークラが入っている背の高いビルだという事で、前もって調べたが現地に来てもわかりやすかった。とりあえず、駐車場に停めなければいけない。
新幹線で来れば色々と楽だったことはわかっている。しかし、私は新幹線と飛行機が文字通り死ぬほど苦手だった。子どもっぽすぎると笑われて以来誰にも話さなくなったが、ホームと新幹線との隙間が本当に嫌いなのだ。一度落ちかけたのも理由かもしれない。母と手を繋いでいなければ、あの隙間に吸い込まれていた。というか、実際左足の靴を落とす羽目になったのだ。苦手にならない方が無理だ。飛行機はもっと単純な理由だった。あんな鉄の塊が飛ぶなんてありえない。絶対に嫌だ。だからどこへ行くにも車だった。
兎にも角にも、駐車場を探す。駅近にはさすがにたくさんあった。時間毎の価格の低さに驚きながら、私は一時間二百円というパーキングに停めた。
歩いてアクトシティ浜松へ向かう。それまでの間、これから会う約束をしている人物について紗和と話した時のことを思い出していた。
**
「中学生?」
思わず声がひっくり返った。電話の向こうで紗和が頷く。
『ええ。中学二年生の男の子です。今時珍しくもないでしょう。インスタにも中高生はあふれてますよ』
「そうかもしれませんけど……」
私が驚いたのは、何をどうしてその中学生と紗和がSNS上で繋がったのかだ。
彼女が使用していたアカウントは、恋人との性生活含めて赤裸々に綴っているものと、母親や仕事についての毒を吐くものだ。趣味について楽しく語っていたのならともかく、どう考えてもきっかけが思い浮かばない。そう訊ねると、逆に驚かれた。
『芳野さん。本気で言ってます? 中学生の男子ですよ?』
紗和は鼻で笑う。
『興味津々なお年頃じゃないですか。セックスの話なんて、ねえ? ネタに使うでしょ』
何に使ってるかまでは言いませんけど、と乾いた笑いまじりに続けたと思ったら、彼女はため息をついた。
『まぁ、まさか本名だとは思いませんでしたけど』
「本名?」
今しがた教えてもらったアカウント名のメモを見返す。『
「本名なんですか? この子」
『ええ。読み方を本来の「おおさき」じゃなくて「おおまえ」にしてるみたいですけど、漢字だから意味ないですよね』
「……本名で、その、紗和さんをフォローしてたんですか?」
本名丸出しで赤裸々なアカウントをフォローするというのは、あまりに考えなしじゃないだろうか、恥ずかしいという気持ちはないのだろうか。私の言いたいことを見透かしたのだろう。紗和は電話の向こうで首を振った。
『いいえ。リストに入れて見てくれてたみたいです』
なるほど。それならまだわかる。彼女は続けた。
『ただそのリストも鍵かけてないので、もし他の人にチェックされたら一発なんですけど。だからまだ甘いですね』
小さな咳払いをして、紗和は言う。
『まぁ鍵じゃなかったおかげで、大翔くんのリストに入ったことが分かったんです。私、どんな人が見てくれてるんだろうって暇な時にそっちに飛んでタイムライン見たりするんですよ。そしたら』
――紗和と同じように、大翔も何かを感じていると気付いたという。
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