第21話

いつも戦争が終わった後はこんな風に抱き着いてくるのだが、馬車が動き出した段階で寝るか離れるかしていた。

それが今日はどうしたのか、一向に離れるどころか寧ろどんどん力が強くなっている。


「サンク様?」

「ん~?」

「そろそろ離していただけると……」

「なんで?」


なんでと言われても、流石にこれは…。


「もうすぐ城に着きますので」

「まだいいじゃん」


そう言ってさらに強く抱きしめられる。


ん?

っていうか、口調が砕けているような。

これが素って言うこと?


どんどん冷や汗が出てくる。


「サ、サンク様……どうか落ち着いて」

「嫌だ」

「えっ!?」

「やっと二人きりになれたんだから、もう少しこのままでいさせてくれ」

「……」


何だこれ。

とりあえず本能的にやばいと感じている。


「サンク様、とりあえず離れてくださ、」

「エリー」

「…な、なんですか」

「可愛い」


耳に息を吹きかけられた。

ぞわっと全身に鳥肌が立ち、一気に体温が上がる。


「ちょっ、サンク様!本当にまずいですから」


ゴトンと音がして馬車が止まる。

どうやら城に着いたらしい。

これ幸いと私はサンク様を押しのけて外に出ようとする。

しかし、扉に手をかけたところでサンク様に腕を掴まれて阻止される。


「サンク様、離してください」

「俺、今回の戦争で頑張ったと思うんだが」

「えぇ、とても素晴らしい働きでしたよ」

「じゃあご褒美くれるよな?」

「え、えぇ。後日何か考えておきます」

「今がいい」


ご褒美なら後日にしようと思ったが、どうやら聞き入れてもらえないようだ。


「とりあえず、馬車から出ません…?お話なら部屋で聞きますから」

「分かった」


ホッとしたのも束の間、馬車から降りると同時に横抱きにされる。

所謂、お姫様抱っこだ。

まぁ、お姫様というか女王なのだが。


「サンク様!?下ろしてください!」

「おい、暴れるな」


いつもとは違う雰囲気のサンク様に抵抗する気力が削がれていく。

でもどうにかして逃げようと頭をフル回転させる。


しかし焦っている中でいい案が浮かぶわけもなく、気づいたらサンク様の部屋に連れていかれていた。

その上、ご丁寧に人払いまでしている。


部屋に着いたらサンク様のベッドに降ろされた。

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