第20話

予定よりも時間がかかり、サンク様とサンク様が率いる軍が帰国なさったのはあの通信から1週間後だった。



今日ようやく帰ってくるということで、私は軍基地を訪れて軍の長とウィルと皆の帰りを待っていた。



「今回は被害も最小限に抑え、無事勝利を収めることができましたな」

「えぇ、やはりこの軍の能力には驚かされてばかりです」

「これを機に、ますます我が国の軍事技術を高めていければと思っております」

「よろしくお願いしますね」


そんな話をしていれば、街の方から歓声が聞こえる。

どうやら、帰ってきたようだ。

ドレスを整えてから杖を突き、立ち上がる。

その時、ちょうど軍の門を通って敷地内に入ってくる皆が見えた。


「女王様、国王様を見てください」

「え?」


よくよく目を凝らしてみれば、私に気づいたようでぶんぶん手を振っている。

その様子は、飼い主を見つけた飼い犬のようだ。

意図せず犬の耳や尻尾が見えてきてしまう。


「愛されていますね」

「…あんなに子どもっぽい反応をなさる方だったかしら」


戦場から帰ってきてアドレナリンが出ているのかもしれない。

いつもは大人しく公務をしている反動で、今夜は遅くまで元気だろうな。

何となく今から先のことを考えて、私は苦笑した。


そんなことを考えていれば、帰って来た隊員は整列してこちらに敬礼をする。


「皆様、この度は素晴らしい勝利を収めていただきありがとうございました。クロンダルは他国から狙われやすいにも関わらず、国民が平和に安心して暮らすことができている背景には皆様の日々の努力があります。お疲れでしょうから体をゆっくり休めると共に、怪我のある者は医務室へ行ってください。たとえ軽い傷や怪我でも軽視しないように」

「「「はい!」」」

「ここで長々と話すのは止めましょう。皆様、そんなに畏まらずとも自由になさってください」


私の言葉に、各々が自由に動き始めた。

自室に帰る者もいれば、仲間と勝利を噛み締めるものもいる。

その中で、私に近づいてくる人物がいた。


「お帰りなさいませ、サンク様」

「うん、ただいま」


疲れた顔をしているものの、柔らかな笑みを浮かべるサンク様に自然と頬が緩む。

少々汚れた顔が昔の外遊びが好きだった姿に重なってしまい、懐かしく思う。

懐かしい思い出に思いを馳せていれば、いつの間にかサンク様に抱き着かれる。


「おやおや、お熱いですね」


軍の長に優しく見守られてしまい、恥ずかしくなる。

今日は皆も疲れているだろうが、私たちがいては気が休まらないだろうと思い早々に城に帰ることになった。


馬車に揺られて城に向かう間も、サンク様は私に抱き着いていた。


おっと、これは不味いのでは…?

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