第19話



「はい」

「エリー!」

「サンク様!?」


通信の先は戦場にいるはずのサンク様だった。

思わぬ通信相手にウィルがいるにも関わらず頓狂な声が出てしまう。


「ご無事なんですね!」

「うん、大丈夫だよ。ちょうど今クレンル王国が降伏したんだ。あとは条約を結んだら終わるから遅くても3日後には帰ることができそうだ」

「そうですか。早くないですか?」

「…なんだ、何か不都合か?」

「いえ、今回の戦争は長引く予想だったので」

「まぁ確かに、俺も最初はそう思っていたんだけどな……敵の指揮官があっさりと降参してくれたおかげで助かったよ」


それはまた随分とあっさりしている気がするが、とりあえず無事に帰ってくることができれば何でもよかった。


「だからもう少しだけ待っていてくれ。いい子でな」

「子ども扱いしないでくださいよ!」

「ははっ、元気そうでよかった。じゃあそろそろ戻るな」

「……お気をつけて」

「あぁ、ありがとう」


通信を切るとウィルがドン引きした目で私のことを見ていた。


「…何よ」

「…性格変わりすぎではありませんか?」

「まったく、分かってないわね~」

「何がです?」

「こういうのはギャップ萌えっていうのよ」

「……絶対違いますよね。どちらかと言えば、」

「『ずる賢い?』」


ウィルは驚いたように私を見つめた後、ため息をついた。

当たり前でしょう。

全部計算の上よ。


「…サンク様も大変ですね」

「多分気づいていらっしゃるんじゃないかしら?」


窓の外の空を眺めながら呟いた。

この戦争が終わったら、またチェスの手合わせでもしていただこうかしら。

欲しいものもあるし。


「ほら、骨砕くの手伝ってちょうだい」

「本当にやるんですか!?」


ウィルの叫び声を聞き流し、私は杖を突いてソファーから立ち上がった。

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