第15話
「あなたたちが部屋を荒らす過程で色んな所に置いてある瓶を割ったでしょう?」
ハンカチで口を覆いながら男に近づく。
男はもう座っているのも辛いらしく、うつ伏せになって息を荒くしていた。
「瓶の中身は私が作った無色無臭の毒ガスよ。空気よりも密度が大きい気体だから屈まなければ吸い込まなくて済むの」
部屋には常に毒ガスを閉じ込めた瓶を置物として飾っていた。
だからむやみに暴れると流れ弾で瓶が割れて、そこから毒ガスが漏れ出す。
机や椅子を盾にするしかないこの部屋では屈んだり身を低くしたりして、攻撃を回避するしか選択肢がないのだ。
そうすると必然的に毒ガスを吸うことになる。
この人たちは私の挑発にまんまと乗り、怒りで心拍数が上がったことにより呼吸数も増えて毒が回りやすくなった。
その上がむしゃらに発砲するから瓶がさらに割れ、自分の命を削ったのだ。
「あなたたちがもっと冷静に頭を使って動くことができていれば勝機はあったかもしれないわね」
部屋にいた敵は全員倒れていた。
体が痺れたせいで、武器も握れないようだった。
「多分ここまで痺れたら痛みも感じないと思うわ。楽に逝きなさい」
そう言って、まだ息がある敵を仕込み杖で刺していく。
銃は銃弾の在庫の関係であまり使いたくなかった。
最後の1人を刺す前にふと、とあることを思い出した。
「折角思い出したし、冥途の土産に1つ教えてあげるわ。実は私の足の障害は随分前のリハビリで回復しているの。お父様とお母様が殺された時に受けた怪我で生じた障害だったから色々大変だったわよ」
過去のことを思い出しながら話せば、倒れた男は顔を青くして震えながら口を開いた。
「な、なんで…クレンル王国が得た情報が間違っていたというのか…」
「いえ、間違っていないわ。私の足が問題なく動くことは私以外誰も知らない。もちろん、国王も含めてね」
「国王すらも騙しているのか!?」
「そんな人聞きの悪いこと言わないでちょうだい。私はただあなたたちみたいな輩が国王に近づくのが許せないから撒き餌を撒いておびき寄せたまでよ。それに『敵を騙すならまずは味方から』なんてよく言うでしょう?」
『足が不自由なため戦場から離れて城で待機している女王』なんて格好の的だろう。
だから最初、この人たちは舐めた態度で好き勝手していたのだろう。
その慢心が命取りだったのだ。
「じゃあ話も終わったから」
そう言って最後を刺した。
全員が絶命したことを確認してから息をつく。
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