第13話
戦場とは違い、私がいる城は時が止まったかのように静かだった。
ウィルも、隊員たちへのオペレイトで忙しいようで私からは緊急時以外通信を入れるのを避けていた。
戦場から送られてくる映像を見ると、やはりクレンル王国は少数精鋭で進軍している。
そのまま予想が当たるとなると、そろそろスパイが国を襲い始めてもおかしくない。
「女王様、今大丈夫ですか」
「大丈夫よ。どうかしたの?」
「国内の監視カメラを確認した所、例の男が城外で数人の男女と密会をしているところを発見しました。動きがあるとなればそろそろかと。」
「分かったわ」
「サンク様へも情報共有しますか?」
「しなくていいわ。そもそも城と軍の情報管理室が狙われるかもしれないことは伝えてしないの」
「な、え、何故ですか!?」
声を荒げるウィルは理由に見当がついていないようだった。
「サンク様にこのことを伝えたらきっと城にも護衛を配置なさるでしょう?そんなことをしたら戦場の人数は減るし、城でスパイが動きやすくなってしまうわ」
「そんなこと、」
「ウェル、これは前線におられるサンク様に不要な心配をさせないためでもあるの」
「…分かりました」
私の考えを汲み取ってくれたのか渋々ではあるが、それ以上は何も言わなかった。
「話を戻すわ。例のスパイたちが動くことを見越して、より一層の警戒を張って頂戴」
「はい」
「あと、命の危機を感じたら機密情報は盗まれてもいいから逃げなさい」
「…」
「機密情報なら盗まれてもその国を潰せばいいわ。あなたたちが生きてくれればまた立て直せる」
「…考えておきます」
返事を濁すウェルはオペレイトに戻るようで通信を切った。
例の男と他のスパイたちが手を組んでいるのであれば、きっと私が城にいることもバレているはず。
でも逃げるなんてことしない。
王が逃げるのはダブルチェックをされた時だけだ。
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