第9話
ノックをして返事を待つ。
「入れ」
「失礼します」
部屋に入れば、サンク様は机に向かって何かを書いていた。
「軍基地視察の報告に参りました」
「待っていた。軍の様子はどうだった?」
椅子に座るよう促されたため、向かい合う形で腰かける。
「隊員たちも熱心に訓練に取り組んでいたと思います。ただ備品が少し足らない部分もあったように感じたため、補充をすべきかと」
「そうか。前向きに検討しよう」
「報告書は後日提出いたします」
「あぁ、よろしく頼む」
「他に聞きたいことはございますか?」
「いや、大丈夫だ」
「分かりました。では、私はこれで」
退出しようと立ち上がりかけたところで、呼び止められる。
「エリー」
「はい」
「明日の昼頃、チェスの対戦を申し込んでもいいか?」
「…明日ですか?」
「明日でなくてもいい。だが、出来るだけ早めに手合わせ願いたい」
「いえ、明日で構いません」
では、と今度こそ部屋を出て自室に戻る。
明日に予定が出来てしまったため今日中にやるべきことをやろうと思い、報告書の作成と公務の書類に取り掛かる。
書類作成が終わった頃にはもう日付が変わる頃になっていた。
今日は体を動かして疲れたためいつもより眠たい。
眠気を覚ますためにコーヒーをいれて一息つく。
先程報告に行った時、サンク様の口調が2人きりなのにも変わらなかった。
加えて、いつもなら突然始まるチェスの手合わせが事前に申し入れられた。
「…今日ウェルにお願いしておいて良かった」
もしかすると、私が不在だった間に何かあったのかもしれない。
でもそれを正直に言うような人でもないからわざわざ聞くようなことはしない。
「書類はまた今度の方が良さそうね」
そう言ってから、今日ウェルに貰った隊員の情報が載った書類を読み込んだ。
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