第7話
「…クレンル王国の動きを調べてほしいの」
クレンル王国はクロンダルから最も近い位置にある国で、貿易も盛んであるため、よく交流がある。
しかし、最近になってどうも不穏な動きが少し見られるらしい。
「これは私が独自に調べてまとめた資料の写しよ。歴史から経済状況まで幅広くまとめたわ。使えそうだったら使って頂戴」
「…また無茶したのですか?」
ウェルに呆れたような目で見られる。
何故皆私をそんな目で見るのだろうか。
「私は良いのよ、知識をつけることが生きがいなんだから」
「それで体調を崩されては困るのですが」
「貴女も言うようになったわね」
そんな軽口を叩きながら持ってきた書類を渡す。
受け取ったウェルは、パラパラと軽く中身を確認する。
そしてすぐに顔を上げた。
「こんなに細かいことをお1人でなさったのですか!?」
「えぇ」
「…何日かけました」
「……言わないといけないかしら」
「何日かけました?」
「…2日」
そう白状した瞬間、思い切りため息をつかれた。
自分でもサンク様に多々注意を受けているし、やりすぎなのは分かっている。
でもどうしても途中で止められないのだ。
「…まぁ、お説教は後日お手紙で送りますね」
「物凄く嫌だけれど分かったわ」
「あと何かありますか?」
「あ、1つ忘れていたわ。私の城にいるこの人の出身国と遍歴も調べてほしいの」
改めて渡した書類には、私に痺れ薬を盛ったであろう給仕の似顔絵と特徴を書いておいた。
それを受け取ったウェルは首を傾げた。
「この男性なら一時期この軍に所属していましたよ」
「そうなの?」
「はい、ですが何年か前に辞めています。理由は分かりませんが自主退職でしたよ」
「問題行動とかは見られたのかしら」
「いえ、特にこれといった話は聞いていません」
予想外の情報に驚く。
まさか軍に所属していたなんて。
「ですが、調べてみた方がよさそうですね」
「お願いしたいわ」
「拝命いたしました」
その言葉を聞いて部屋を出ようとすれば呼び止められる。
不思議に思い振り返れば、紙の束を渡される。
「これは?」
「隊員の所属部隊や得手不得手など様々な情報が載っています。お使いください」
これから戦争が起こることを見越してのことだろう。
「…ごめんなさい」
この軍も、戦争がなければ必要ないのに。
「謝らないでください。私たちは自らの意思でここにいます。それにこの国が好きだからこそ、この国のために戦えるのです」
「ウェル……」
彼女の目は真っ直ぐ前を向いていて、強い意志を感じた。
「だから、女王様も気に病まないで下さい。どうか私たちを導いてください」
「ありがとう」
お礼を伝えてから、情報管理室を後にする。
私も、この国を守る為にもっと頑張らなくては。
決意を新たに、杖を突きながら射撃場へと向かう。
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