第6話


それから数日後、私は国内にある軍基地を訪れていた。

馬車から杖を突きながら慎重に降りると軍の長が挨拶に来てくれた。


「お待ちしておりました。ご足労いただき痛み入ります」

「いえ、こちらこそ貴重な時間を割いていただいて感謝しております」

「本来ならば皆でお迎えするところでしたが…」

「そのままの姿を見たいですからお迎えいただけただけで十分ですわ」


いつもの重いドレスではなく、動きやすい格好で訪問していた。

女王の訪問としては相応しくない服装かもしれないが、軍の訪問はこの服装だと決めているのだ。


「そう言っていただけると幸いです。では早速参りましょうか」


彼に案内されて向かった先は訓練所だった。

既に多くの兵が訓練に励んでいた。


「ここはいつ見ても活気がありますね」

「皆、国を守りたいと志願した者だけあって士気が高いのです」

「素晴らしいことです」


この国の兵たちは、他国に比べてとても優秀である。

それはここの訓練風景を見れば一目瞭然だ。


「それで、本日はどのようなご用件で?」

「国王には視察とお伝えしましたが、実際はいつも通り射撃場をお借りしたく思っています。加えて、情報管理室で調べていただきたいことがあります」

「勿論でございます。では先に情報管理室に向かいましょう」


事前に連絡をしていたおかげでスムーズに事が進む。

私達が話している間も、兵士たちは真剣に訓練を続けていた。



しばらく歩いて辿り着いたのは、情報管理室だった。

ここは国の監視カメラの確認したり、他国が不審な動きをしていないか調べたりするための専門部署だ。

また国家機密も扱い、盗まれないように守ってくれている側面もあるため、他部署と比べて少数精鋭の部署でもあった。

軍の長にも仕事があるだろうと思い、ここで大丈夫という旨を伝える。

どうやらまた帰る時に見送りに来てくれるらしい。


長を見送ってから事前に貰っていたカードキーをかざして中に入ると、モニターに囲まれた部屋の中には数人の男性と1人の女性が座って何やら作業をしていた。

私に気づいたのか、女性は立ち上がると敬礼をした。


「お久しぶりです、女王様」

「久しぶり、元気にしていたかしら」


軍服についている数々のバッジから彼女の努力とこれまでの功績が伺える。

彼女はこの情報管理室の隊長であるウェル・ベルダム。

軍内でも数少ない女性であり、その実力は折り紙付きだ。

彼女が隊長になってからの付き合いではあるが、今では文通をするくらい仲がいい。


「はい、おかげさまで」

「それなら良かった」

「今日はどうされたんですか?急に視察なんて珍しいですね」

「えぇ、ちょっと調べてもらいたいことがあって」

「調べてほしいことですか?」


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