第2話
「知ってるからこそ聞くが、国民を騙している事実に心は痛まないのか?」
「騙している?」
「あんなに大々的な結婚式を挙げておいて俺たちは婚約者止まりだろ」
「たまたま婚姻書にサインをしていないだけです」
結婚式は挙げたし、誓いの言葉も交わしたが結婚はしていない。
それが私たちの関係性の現状である。
「そもそも、チェスで負けた方が勝った方のお願いを聞くなど言っておきながらなぜ重要な時以外で勝てないのですか」
「そんなこと俺に聞くな。俺はいつでも本気なのに勝てないんだよ」
不貞腐れるように口を尖らせるサンク様は子供っぽく、思わず頭を撫でたくなる衝動に襲われる。
だが、それは流石に恥ずかしいためグッと堪えた。
私が無言でいると彼はゆっくりと口を開く。
「…また、俺らの国を狙ってくる奴が出てきそうだな」
ほんの少し、緊張感の走った空気に背筋が伸びる。
クロンダルは統合して間もない国ということもあり、他国から領土を狙った宣戦布告は少なくなかった。
つい半年前に勝利を収めたというのに、まだ懲りずに仕掛けてくる輩は後を絶たない。
「そうですね。私としてはこれ以上無駄な血を流したくはないのですが……」
「それは無理だろうな」
「分かっております。救いなのはこの国の軍事態勢は志願形式を取っていますので、民が自ら進んで戦場に立ってくれることでしょうか」
「あぁ、そうだな。おかげで国民の士気は高い」
「民の命を守るのもまた我々の役目です。しかしそこに国民の協力が必須ですから」
「そうだな」
会話の途切れた部屋に沈黙が流れる。
ちょうどノックと共にサンク様が呼ばれたことにより、今回の密会は終了となった。
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