第3話

行き交う人々を見て小さく息をつく。


「この国は結構繁栄しているから王族に直接接触するのは危険ね」

「そうだな。繫栄しているということは警備体制が整っているということだ。慎重に行動すべきだぞ」

「分かってるわよ」


猫の言葉に素直に返事をしながら歩く。

しかし、偵察も兼ねて街を歩いているうちに何か違和感を感じた。


「……ねぇ、何か変じゃない?」

「あぁ、確かに妙な雰囲気を感じる」


この国に入ってからというもの、ストリートチルドレンを見かけていない。

今まで色んな国を見てきたが1人もいない国なんてなかった。


「…ストリートチルドレンどころか野良猫もいないなんてことある?」

「どうだろう。意図的に隠したり、排除している可能性も考えた方がいいかもな」


とりあえずできるだけ町の中心から離れた宿に泊まるため、足早に移動を開始する。


「この国にはしばらく滞在するつもりなのか?」

「えぇ、そうよ。小さな情報でも高く買ってくれそうだしね」


できるだけ街の中心から離れた所の宿を目指して足を進める。

街の中心は確かに人の動きが観察できるが、情報は誤魔化されたものしか見当たらない。


狙い目は街の中心から離れた国境付近。


他国との隠密活動や人身売買は街の中心から離れてしまえば案外宿からでも見ることができるものだ。


「…本当にストリートチルドレンがいない」


どんな裏路地を見ても見当たらない。

それどころか生活していたような痕跡もない。


「お前はどう思う?」

「……綺麗すぎるのが逆に異様。本当に誰も生活していないなら路地裏はもっと汚れているわ」


そう答えると猫はククッと喉を鳴らして笑った。

私の影から金色の目がこちらを見つめている。


「これは誰かが意図的に痕跡を消しているな」


やはり猫もそう思ったようだ。

これなら追求すればもっといい情報も出てくるかもしれない。


「……まずは人身売買の線を考えて窓側の部屋を取らないとね」


できるだけ国境に近い宿を探して入ってみる。

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