2段目 手すりを滑る

どうして、子どもは手すりを滑りたがるのだろう。


早く下の階へ行きたいのだろうか。

こんな狭い校舎で、そんなに急ぐ必要はなかろう。


とはいっても、私もここから動いたことは無いので、

このX小学校がどれほどの広さなのか知らないが。


さて、問題は、この少年Eだ。


Eは、3階に教室があるのだが、毎日のように手すりを滑って降りている。

他の児童や、先生が注意することもあるのだが、いっこうにやめる気配はない。


しかし、私は知っている。

このEは少女Fの事が好きなのだ。


学級でまとまって階段を上るときは、いつもFの事を見ている。

名簿順で並ぶと、ちょうど斜め前の位置関係らしい。


ある日、学級の教室移動で、少女Fは言った。


「うわ、ここの手すりぐらぐらじゃん。絶対これ、滑ってる人いるよね。サイテー」


私はすかさずEの表情を見た。

なんとも言えず、目が泳いでいる。

焦っているようだ。



そして、この日からEが手すりを滑ることがなくなった。










先生、どうか手すりを直してください。

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