とにかく愚図

エリー.ファー

とにかく愚図

「あなたは誰ですか」

「築山 千一郎」


「誕生日を教えて下さい」

「知らない。興味もない」


「血液型を教えて下さい」

「調べてない」


「職業は何ですか」

「言えない。言ったら、君を殺すしかない」


「好きな食べ物はなんですか」

「直ぐに食べられるもの」


「嫌いな食べ物はありますか」

「乾いているもの全般」


「好きな飲み物はなんですか」

「水」


「暇な時は何をしていますか」

「何もしていない。もしくは、暇な瞬間なんてない」


「好きなものと嫌いなものを分ける条件とはなんですか」

「気分」


「小説は好きですか」

「読まない」


「映画は好きですか」

「好きでも嫌いでもない。だが、映画は久しく観ていない」


「将来の夢のようなものはありますか」

「ない。日々を過ごすのみ」


「毎日、お風呂に入っていますか」

「入れないことも多い。仕事が終われば、もちろん入る。至福の時間だ」


「朝ごはんは食べますか」

「必ずトーストを食べることにしている」


「結婚していますか」

「していない。今後、する気もない」


「子どもはいますか」

「いない。そして、いらない」


「子どもは好きですか」

「大嫌いだ。うるさい」




「ぶっ殺すぞ」

「たっ、助けてくれ。頼む。お願いだ。もう、何も知らない。本当だ、何も知らないんだ。俺だけは、俺だけは見逃してくれ。頼む」


「お前の命もここまでだ」

「だっ、だから助けてくれって言ってるだろ。頼む、お願いだ。頼むよ」


「お前はアマチュアのくせに生意気だ」

「すっ、す、すみません。本当にすみません。以後、気を付けます」


「貴様は殺し屋のとしての矜持がなっていない」

「ないですね。その通りです。矜持って必要ですよね。はい、ごめんなさい」


「手抜きをしやがって」

「い、一応、頑張ったんですけど。失礼しました」


「命って何だと思う。なぁ、教えてくれよミスター」

「か、考えたこともないです。命ですか。まぁ、その、大事なものですよね」


「助けてくれ。頼む」

「まぁ、しょうがないですね」




「お前の名前を教えろ」

「ミスターウィズニーハヴケーションだ。二度は言わない」


「お前の罪を教えろ」

「単位が分からないから数えられない。本当にすまない」


「お前の力を見せろ」

「腕相撲がいいか、野球ゲームがいいか、サッカーゲームがいいか。何でもいい、決めてくれ」


「お前の美学を語れ」

「美学なんて、ものはない」


「お前の哲学を教えろ」

「ない。そんなものはない。あと、その質問にさっと答えるヤツがいたら、超キモいぞ。マジで」


「お前は何者だ」

「ミスターウィズニーハヴケーションだ。さっき言ったはずだ」


「お前はこの世界のバグだ」

「じゃあ、お前がこの世界のパッチと言えるかもしれないな」


「お前は誰になろうとしている」

「誰にもなる気なんてない」


「お前にとって世界とはなんだ」

「俺たちは世界と繋がっているが、世界は俺たちに興味なんて持っていない。それ故に、俺たちは自由でありながら世界という武器を使う権利を持っている。何でもできる。信じていないだけで、それが答えだ。まぁ、そう思っているうちは、五流か六流にしかなれないだろうな」


「お前は誰を殺したんだ」

「俺自身だ」

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