悪役不要論と登場人物について

 本作に、人間(意思疎通のできる知的生命体、程度の広さで)の「悪役」は誰一人として登場しない。登場人物は名無しの店員なども含めて全員善人である。間接的なものも含めても、悪人と呼べそうなのはライラを攫った珍獣商人くらいだが、こちらも運命を動かすために必要な人物であったことを示唆している。


 飛竜にしても『混沌の獣』にしても、悪意は持たない野獣のような扱い。真の邪悪はラスボス前座の屍術師だが、こちらも戦闘中は物言わぬ魔物扱いで、後から悪行が明かされるという形にした(単なる雑魚の火吹き虫と大して変わらずにあっさり倒されたのは「悪意は善意に勝てない」という人間讃歌に他ならない)。


 現実でもフィクションでも、悪意に振り回される話にうんざりしていたので、せめて自作品の中ではいい奴らばかりにした。友達や部下や上司に欲しい!というキャラが一人でも見つかったのなら幸いである。悪役がいないとストーリーが回らないという人もいるが、少なくとも私の物語の場合は悪役は不要である。


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 さて、本作では話の規模の割に登場人物が多い。まずゴルドのパーティを6名にした時点でちょっと過剰だった(言うまでもなく『ウィザードリィ』のパーティが基準なのでそうなった)。トムが離脱後は二人旅になるわけだが、結局は新人たちを加えて数名のユニットで話が進む。終盤はライラとともに旧パーティに合流して、さらに猟犬アルフまで加わり、戦闘や会話シーンで動かすのに苦労した。ゴルドを領地にとどまらせたり、イザに別行動させたりと人物を減らす案もあったのだが、物語的にはトムが元のパーティに復帰するというのが重要だと考えたのだ


 なお、初期の構想だと新人トリオにジャックまで最終戦に同行していたが、さすがに収集がつかなくなりそうだったので、戦闘面では飛竜戦を最後の出番にしてしまった。氷の付与魔術が永続化したオリバーの剣などは、冷蔵庫ネタのフックにはなったものの、戦闘で活躍させられなかったのはやや残念である。


 ラストの結婚式の参列者はカーテンコールのイメージ。ゴルド二世も連れてこようと思ったが、それだと何のために家督を譲ったのかわからないので領地に留まっててもらった。


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 全体的なキャラの反省点として、中高年女性の準レギュラーキャラは入れるべきだった。ギルド宿には女将さんがいてもよかったし、武具職人あたりはギルドマスターとキャラが被るので女性にしたほうがよかったかも。まあ神官長なども含めて、このあたりの年長キャラは「読者の脳内にあるような定形ストックキャラ」的なイメージで造形したので、奇をてらわないのが正解だとは思うが。


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 人物の名前を勢いで設定してしまったため、エルとエルフとアルフのように紛らわしい(しかも似ていることに意味がない)名前が、下手をすると一文中に複数出てくるになるのはちょっと失敗だったと思う。

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