2日目 アルバイトと部活の両立は難しい<前編>

三輝とシェアハウスをはじめて1ヶ月が経ったころ、今日はコンビニのバイトの日。

昨日シェアハウスの宣伝するための資料を作っていたため若干眠い。

眠い目をこすりつつも朝の店番をしていた。

実は最近朝か夕方の時間帯に31円のおやつカルパスを2本ほど買って帰るだけの客がいるという噂がある。

コンビニなのにわざわざ駄菓子を買いに行くなんてことはするのか?

僕は疑問に思っていたがそこは気にしないようにしよう。

と思ったら誰かがコンビニに入ってきたようだ。茶髪のショートで身長は160㎝ぐらいだろうか。服は藍色チェックのパーカーを着ている。その青年がレジのところに来て机におやつカルパスを2本置く。

まさかこいつが噂の客なのか?

「君が噂の…」

「噂?何?広まってんのか?」

「いや…別に…」

青年は会計を済ませコンビニを出ようとする。

「そういえば…お兄さん」

「なんだ?」

「お兄さんは大学生の何回生なの?」

「ああ大学生だ。今月から2回生だ」

「そっかぁじゃあ僕の先輩だね」

先輩ということはこの青年は今月の新入生なのだろう。そう思っていると赤毛の青年が現れた。

「深夜、こんなところにいたのかぁ。探したぞ」

「いつものお菓子買ってたんだよ。店長に連絡したでしょ?」

「悪い、聞いとらんかったわ」

声からして見覚えのある声だ。こいつは赤澤 風華あかざわ ふうかは僕の腐れ縁で大学の同級生だ。

「おっ、咲夜じゃないか!いつものコンビニバイトか?」

風華が手を振ってこういう。

僕はため息をつきつつも、事情を聞きたかったので店長にわけを言って休憩をもらい、風華のところに行った。

風華は深夜という青年と一緒に駐車場の休憩スペースで待ってくれている。

「風華、この青年は…」

僕が風華にこう聞くと

「こいつは鬼崎 深夜きざき しんやだ。3月にここに引っ越してきたらしくて住む家が見つかるまで、俺のところにバイトしつつ住んでもらってるんよ」

どうやら鬼崎深夜は高校生まで田舎の実家で暮らしていたらしく、大学で親元を離れて暮らすことになったらしい。しかし住むところがなかったため風華の家に泊まり、カフェ、「フターットバックス」でバイトしているというのだ。

という事情を風華から聞き終えた直後、風華のスマホから電話の着信音が鳴った。おそらく通信アプリのRAINのグループ電話だろう。

「わりぃ、深夜。電話出るから先帰っててくれ」

「はぁい」

深夜が返事すると、風華は少し離れて電話に出た。

「誰かと電話しているのですか?」

「たぶん部活の人だろうな」

「部活の人?確か、2つの部活を兼任しているって風華さんが言ってたけど…」

「おそらく、2つの部活のうちの一つ、ゲーム制作同好会の方だろうな。今、問題児の先輩ともめてて問題が起きてるから」

「問題児の先輩と問題?」

「うーん話した方がよさそうだな」

僕は深夜に風華が兼任して入っている、ゲーム制作同好会について話した。

ゲーム制作同好会は前までれっきとした部であったが去年の文化祭終わったあたりから問題が起き始めたのだ。春の部活勧誘系のためにゲーム作成をしていて問題児の先輩がいるAチームとプログラマーのシューティングゲームが得意な先輩がいるBチームに分かれており風華はBチームにいるのだがBチームのリーダーがその問題児先輩に呆れているのだ。

というのも前回の文化祭で実は、Aチームが長編RPGのソフトまで作ってしまいソフトを販売したのだが中身がバグまみれだったのと仲間1人のセリフがあまりにも少なすぎてなんでその1人がいるかわからない状態になっていたらしく揉めていたらしい。その味方をしていたのが風華で風華は追い出される形でAチームから外されたというのだ。まぁ風華はAチームで敵役をノリノリで作っていたけど…。ということを僕は深夜にすべて話した。

「まぁ一応Bチームに入ってもいい感じにやれているみたいだけど…Aチームで新聞部兼任の日向ちゃんのこと気にしているからなぁ…」

「日向ちゃんって新月日向しんつき ひなたさんのこと?」

「そうだよ。深夜は日向のこと知っているのか」

「うん、よく雪くんと一緒にお店に来るから」

日向は、ゲーム制作同好会と新聞部を兼任している女性である。元々は新聞部1本だけに絞りたかったのだが、友達に誘われてゲーム制作同好会に入ったそうだ。

ちなみに聞野 ききの ゆきは日向と同じ、新聞部の部員で気が弱いけどしっかり者で頼りがいがある男性だ。日向とも仲が良くゲーム制作同好会にいる時以外はいつも一緒に行動している。学科もお互い同じ現代社会学部だそうだ。

「でも最近、日向さん、なんか落ち込んでいたから気になってはいたんだ」

深夜の顔を見て俺はそんなに日向のこと気にしていたのかと思った。

確かに雪から最近、部活終わったら必ずカフェに行ってるって聞いてはいたからな。

「にしても風華の奴戻らないな。深夜を老いたまんまどこに行ったんだ?」

僕がそうつぶやくと深夜が無言でRILNを見せる。

そこには「すまん、深夜をカフェまで送ってくれ。俺は用事があるから、大学に行ってくる」と書いてあった。何かあったのだろう。

まさかまた部内でトラブルでもあったのか?部内のトラブル多いって言ってバイト中にも呼び出しをくらうとはいくら何でもトラブル多すぎるだろ。

僕はそう思いため息をついた。

その後、僕はコンビニの店長にわけを伝えるとなんと今日は上がっていいと言われた。まぁ店長との仲もいいし何より今日は人が足りているそうだ。

まぁ絶対店長が嘘ついていると思うがたぶん気になることがありそうな顔を僕と深夜がしていたところを店長に見られていたんだろう。

そうでもなければこんなことはしないはずだ。

「なぁ深夜、お前今日大学に行ってみないか?君が入学する大学に」

僕がこういうと深夜は目を輝かせて「いいの?」って聞いてくる。

「いいよ、どうせ気になっているところもあるし、警備員には誤魔化しでも伝えてくれればいいから」

「やったー!ありがとう」

深夜はそう言って喜んだ。

「いいよ。じゃあ僕は着替え済ませてくるから少し待っててくれ」

僕はそう言って更衣室に行った。

僕はいい店長に恵まれている。

それなのに風華は何で恵まれていないのか。

運がいいのか悪いのかそれは本人にしかわからない。

まぁ本人には聞いていないからあのゲーム制作同好会が楽しいのかはわからないけど…様子が気になることは事実だ。

だから見に行かなきゃいけない。

あのゲーム制作同好会がどんな感じなのか。

どうして日向が悲しい思いのしているのか?

知らないといけないのだ。

僕はそう思いつつ着替え更衣室を出てコンビニを後にした。

「じゃあ行こうか」

僕は深夜に向かってそういう。深夜はこくりとうなずき、僕の後ろをついてきた。

目的地は黒嶋学院大学だ。

その大学のゲーム制作同好会で何が起きているのか知るために…。








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怪しげなシェアハウスの日常 鬼藤 ハナ @hana-yuima

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