第15話 消える

「あれ.....二有無君、なんで消えて」


そう愛花は言って、二有無に触れようとした

だが、その手は二有無の体をすり抜けた


「あ.....」


二有無はその時、感じた

今までの孤独が消えていく感じが


孤独が埋められて、満足するような


二有無と正昭は孤独を感じたことで過去に引き寄せられた

だが、二人は友達になったことで互いの孤独は消えた


過去から現代に行ける条件

それは.....自分が感じる孤独を消え去ること

それのみであった


「二有無.....先に行ってるからな」


そう言って正昭は光りと共に体がすべて消えた


「.....」


二有無も分かった

自分がもうじき現代に戻れることを


「待って!二有無君がいなくなったら.....私は誰と話せば」


藍火は必死に二有無をもがいて、阻止しようとするが

虚しくも二有無の体が段々と消えるばかりであった


「うっ.....。うう.....」


藍火は大粒の涙を流した

眼からポタポタと悲しみの雫を流す


「.....藍火」


「二有無君.....。最後に言って」


「.....」


「最後に私に『好き』って。世界で一番愛してるって。これから私だけを見て欲しい」


「.....」


二有無は消えかける手を藍火の頬に当てた

そして、言った


「好きだよ、藍火。世界で一番」


その言葉を最後に二有無は体の全てが消えた


「.....二有無君、私はこの後どうすれば」


残された場所で藍火はただ一人泣き続ける

二有無の残り香を感じようとひたすら二有無のいた場所を触れる

が、藍火は何も感じなかった


「二有無君.....私は独りだよ」


残された場所で藍火は独りで


いや、独りではなかった


藍火の側で誰かの声が響いた


「藍火!」


「.....!」


藍火はその声に反応して振り向く


「なんで.....。どうして.....」


藍火は10年独りであった

誰にも会うことなく


だが、今聞いた声の主は藍火は直ぐにわかった


直感で分かった、その声の主を


藍火はその声の主に駆け寄り、触れる

そして言った


「緑秋 京子.....さん。なんで、ここに.....」


そう藍火は驚愕の表情を浮かべた

その先にいる少女の名前は 緑秋 京子

藍火の親友


そして、先の地震の被災者


「ここにいたんだ.....。藍火さん」


そう京子は息を切らしながら言った


「京子.....。なんで.....ここに」


「教えてくれた.....」


「え?」


「震災の時、校舎に津波が来た時に知らない男の子からあんたの.....藍火の居場所を言ってくれて。その男の子は.....二有無っていう名前だったっけかな。すぐにその二有無っていう人はいなくなったけど」


「あ.....」


「それで、急にそのことを思い出して来たの。まさかこんな山の中にいたなんて.....」


藍火のまぶたの頬を大粒の涙が伝う

それは悲しみの涙ではない

喜びの涙


藍火は直ぐに立ち上がり、京子の元へ駆けよる

そして、彼女を抱きしめた


「京子!今まで、どこに行ってたの!私、孤独で孤独で悲しくて.....。もしかしたら、他の子もいるんじゃないかって待ち続けていた。だけど、全然いなくて.....」


藍火につられ、京子も耐え切れなくなり涙を流した


「うぅ.....。私も.....ずっと探してたよ。私も孤独に苦しんでたよ!」


二人は抱き合って、互いに涙を流した


「京子.....」


「藍火.....」


抱き合い、二人は泣きあった


そして、その後今までのことについて語り合った


藍火の孤独は薄れていった

だが、それでも何日も何ヶ月も何年も


藍火は二有無のことを忘れなかった.....

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