第14話 条件

「はっ.....!」


二有無は起きた

目が覚めると同時にまぶたを開けて、起き上がる


側には正昭と藍火がいた

藍火は二有無と同じく寝ていた

正昭は二有無の隣で座っていた


正昭は二有無が起きたことを確認すると、穏やかな口調で言った


「おはよう」


「ああ.....おはよう。すまない、寝ちゃってた」


「寝てたというより気絶してただけどだな」


その言葉を聞いて、ハッと思い出したかのようになり

二有無は素早く辺りを見回す


「え.....藍火は?確か僕は墓にいたよな」


「ああ、いたな。もうあそこは浸水してたからおぶってやったぞ」


「あ.....」


時刻は6:00

日が昇る頃

日光が眩しく光り、浸水する水を透き通らせる


津波によってここまで届いている水は辺りを浸らせている

だが、二有無はそこまで危険さを感じなかった


先ほどまでの到達していた波はない

いやあるはあるが、それは遠くの山のふもとで見られた

今ここではチャプチャプと音を鳴らし、水が流れてきている


「正昭、お前もしかして.....さっきの場所から僕たち二人を運んできたのか?」


そう、迫真の顔で二有無は正昭に聞いた


正昭はどや顔で答える


「ああ!大変だったぞ。二人を持って、泥の中を進むのは大変だったからな」


「ありがとうな。正昭がいなかったら死んでたわ」


二有無と正昭は互いに手を取る


「.....二有無君」


「!.....藍火」


その時、隣で寝ていた藍火が起き上がった

頭を抱えて、苦しそうに

それでも二有無の執念は消えておらず、二有無に手を伸ばす


「二有無君は.....私の光。二有無君がいなかったら私は生きていけない」


ぺたぺたと音を鳴らして、四つん這いで二有無に近づいた


「.....藍火、僕夢の中で当時の、地震の時の光景を見たよ。辛かったんだな」


そう二有無は言った

その言葉を聞いて、藍火は動きがピタリと止まる


「.....うん。その後、私は誰からも見えなくなって孤独のままで悲しくて。でも、今更私は生き返ることが出来ない。だから、二有無君が.....死んでほしいの」


そう目を濡らせて、平然と藍火は言った


「大丈夫!私も一緒に死ぬから。だから、今すぐ津波の中に居よう。最後は抱き合って死のう!」


「おまっ.....。」


正昭はその数々の言葉に口をあんぐりとする

だが、当の本人である二有無は優しさを含んだ顔で言った


「最初は.....藍火といるのは楽しかったよ。僕もまた藍火と同じく孤独だったから。だけど.....今は違う。僕には.....友達がいるから」


そう言って二有無は後ろを振り向く


「正昭がいるから。だから、僕はもう孤独じゃない」


「.....二有無」


その様子を見て、藍火は笑顔で言った


「.....じゃあ、その友達も殺せばいいんだね。さっきは失敗したけど、今度は!」


そう言って、藍火は正昭に飛び掛かった

今度は失敗しないように、二有無が反応するより早く

そして正確に


手元にあった先端がとがった木で正昭を刺そうとする


「危ない!」


「二有無君、悪いけど邪魔しないで。こいつさえ殺せば、私たちは結ばれるんだよね?」


二有無は藍火を抑えようとする

だが、一歩早く藍火は前に出た

そして、二有無が防ぐより早く

正昭の心臓に刺した


「.....!」


二有無は目を防ぐ

友達の血が飛び散る残場を見た句がないがために


「.....?」


だが、いくら待っても血など飛んでこなかった

正昭の悲鳴も聞こえてこない


「正昭.....?」


意を決して二有無は目を開ける


「.....正昭、お前それ!」


あけた次に飛んできた光景は

正昭が光り、どんどん足の方から消えていく景色であった

藍火が刺した木は正昭の心臓をすり抜けていた


「.....」


「正昭、戻ってこい」


心配する二有無に正昭は優しく諭す


「大丈夫だ、二有無。何だか戻れそうな気がするんだ。二有無、自分の体を見ろ」


「え.....」


そう言われて、二有無は下を向き自分の体を見る


「あ.....」


自分の体もまた正昭と同じく、足元の方から光と共に消えかかっていた

それと同時に、元の世界に帰れるという感じが包み込んだ


「帰れるのか.....?」


元の世界に帰れる条件


それは


自分の孤独を無くすことだった

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