第13話 私とあなた
「私と一緒に居ようね.....。ずっとずっと、この海を見ながら私と暮らすの」
「い.....」
あまりの数々の言動に二有無は言葉が出なかった
そして、絶望を感じていた
これは簡単には現在に返してくれそうにないことを
薄々と感じていた
「あ.....あ.....」
正昭は二有無と同じ反応をした
その声を聴くと、藍火は先ほどまでの恍惚な表情を消して
酷く嫌そうな顔を浮かべた
「なのに.....。なんで、あんたまでいるの!?誰かは知らないけど、あんたは招待してないわ!」
そう藍火は正昭を睨んだ
「私は海岸で話しかけてくれた二有無君だけを過去に呼んだの。なのに、なんで知らない人がここに居るの?これからの私と二有無君の世界に不純物が混ざるじゃない」
藍火は激しく激高した
畏怖し腰がを下ろしている正昭に飛び掛かる
「あ.....。お、おい。藍火!やめろ!」
今にも殺しかからんと藍火は正昭に飛び掛かった
それを止めようと、二有無は間に入る
「あ.....」
「二有無君。ごめん、どいて.....」
偶然にも二有無と藍火の頭がぶつかった
二人とも意識を失いその場に倒れる
もう津波はそこまで来ており
足のあたりまで浸水している
その水たまりに倒れ、ブクブクと泡をはく
「お、おい起きろ、二有無。そのままだと溺死するぞ」
だが、彼は起きず
口や鼻に泥水が入り、今にも窒息死しそうであった
「くそ!こうなったら.....」
正昭は二有無を担いだ
「.....」
正昭はチラッと藍火の方を見る
彼女の又、起きずに溺死しそうになっている
さほどの間、迷ったが
やがて正昭は藍火の元に駆け寄り、彼女も持つ
「藍火が死んだら、二有無が悲しむからな.....」
そう言って、ゆっくりと水がない所へ移動していった
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「.....ここは」
一方、二有無の意識の中
「海.....?ここは一羽村か。僕は確か飛び掛かろうとした藍火を止めようとしたら、ぶつかって。そして.....もしかして今夢の中にいるのか?」
そう二有無は前方に見える広大な海を見上げる
そして、その男は学校に立っていた
「学校.....?」
そう言って、二有無は辺りを見渡す
そこは学校であった
だが、自分の知っている学校ではない
それはコンクリートで作られた近代的な校舎ではなく
木造で作られた一昔前の校舎であった
木が黒ずみ、窓が黄色く汚れている
まさしく昔の昭和風の校舎
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
「.....?なんだ、地震?」
突然として、二有無はその場が揺れていることを感じる
その校舎内はガタガタと音を鳴らし、人々の恐怖を掻き立てる
本棚、机、花瓶、灯りなどあらゆるものが倒れる
窓にはヒビが割れ、校庭の地面は隆起を起こしている
それと共に、前方に巨大な波が発生した
空にまで届きそうなほど高い高い波が上がる
その勢いはとどまることを知らず、堤防を越え
村を次々に破壊していく
「これは.....津波?」
「あ.....誰か助けて.....」
「え.....」
二有無は左の方から誰かの声が聞こえて、思わず振り向く
そこには外で唸る津波を見て、震えている少女がいた
その姿は服装こそ違うが、藍火であった
「.....藍火!」
二有無はとっさに藍火にほうに走る
だが、到達した波によって阻まれた
窓を破壊し越えた波は二有無を押し上げた
「藍火!」
それでも膨大な水に阻まれても、二有無は手を伸ばす
「あ.....」
その声に気付き、藍火は二有無の方を振り向く
誰かは分かっておらず少しの時間固まっていた
だが、生きようと藍火はやがて二有無の方に手を伸ばす
「藍火!僕の手に捕まれ!」
「.....うん!」
流れる水が体中に当たり、流されそうになる
その中、二有無は扉に必死につかまって藍火に手を伸ばす
「ん.....」
「もうちょっとで届く、藍火!」
そうして、藍火と二有無の手が当たった
フッ
その音と共に、藍火は消えた
「えっ!藍火?」
それと共に徐々に周りの風景が暗くなっていく
「あ.....」
景色が消え、どんどん暗くなっていく
二有無はまるで宇宙にいるような感覚に陥った
それでも、変わらず二有無は先ほどまでの場所に手を伸ばした
「ぐ.....。届け」
その願いもむなしく、二有無は徐々に意識が消えていくのを感じた
「.....っ!」
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