第9話 タイムスリップ
「取り合えず、俺についてこい」
正昭は二有無の手を引っ張って、家から出る
それに続き藍火もすかさず靴を履き二人の後を追った
「痛い痛い。僕も走るから引っ張るのやめろ」
「あぁ.....すまん」
正昭はとっさに二有無の手を離した
今まで感じていた狂気が晴れ、やっと正気を感じれた二有無は
体中に力を入れて正昭の後をついていく
少し息を切らしながらも、二有無は正昭に言った
「正昭、一体何でこんなことしたんだ?まさか、お前あの子を知っているのか」
その問いかけに正昭はすかさず食いつく
「ああ!知ってるとも。彼女の名前は藍火だろ?」
「そ、そうだが.....。何か問題でもあるのか?」
「ある。お前がキスをしていた少女、藍火。彼女は既に死んでいる」
「は?」
その予想外の言葉に二有無はあっけに取られる
情報が処理しきれず、二有無は少し歩く速さを遅くした
二有無は藍火を見ようと後ろを振り返る
だが、そこには先ほどまで自分たちの後ろを走っていた藍火の姿はどこにもなかった
「おい、立ち止まるな!」
「だ、大丈夫だって.....。少し疲れたし。それより藍火がもう死んでるってどういうことだ?」
「そのまんまの意味だ。いや、今は藍火に関しては怖くない。問題は.....。まあとにかく黙って俺の後についてこい。このままだと俺たちは死ぬ運命になる。それが嫌なら静かに走るんだな」
「.....分かった。後でじっくり聞かせてもらうからな」
二有無は強く頷く
正昭はそれを確認すると山の方へ駆けていった
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「はあ.....はあ.....。なんで.....山の方に走ったんだ?」
終着地点
山のふもと
山の頂上で二有無は息切れしながら同じく息切れを起こしている正昭の方を振り向いた
時刻は12:00丁度
空は真っ暗に染まっているが、星が点在している
雲一つない美しい星空
そして、その下にいるのは二有無たち
その山の頂上は草木があるが、それ以外棘やゴミや泥などがない
まさにその美しい空を見るには絶好の場所であった
そこで正昭は見つめている二有無に手を置いて言った
「前を見てほしい。前には町の景色があるはずだ」
「?.....。前.....に何かあるのか」
狐につままれた気持で二有無は正昭に向けていた顔を前方へ向ける
その時、二有無は口が開いた
「あ」
そう二有無は一言思わず出した
その前方の景色には町が波によって飲み込まれる様子があったからだ
「え、津波.....?」
「そうだ。津波だ」
遥か遠くにある海は荒れにあれている
音はしない、無音である
だが、確かに村が飲み込まれていく景色があった
波が舞い上がり、その強大なエネルギーは防波堤を軽々と超える
最初は水だけだったものの、建物の破片や車や岩石など様々なものを巻き込んで
やがては強大なエネルギーとなる
村に人はいない
ただ無人となったその住処が荒れ狂う波によってただ破壊されていった
その家の中には二有無が先ほどまでいた家も含まれていた
「あ.....あ.....。どうして」
言葉にならない二有無に正昭は真剣な表情で言った
「二有無。俺たちは過去に来てしまったらしい」
「.....嘘だろ」
過去に来る
あり得ない展開
漫画でしかありえない展開
だが、二有無はその事実に反論できずにいた
その景色が昔見た景色と酷似していたからである
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