第8話 救い

「ああ.....」


二有無はもうこのままなすがままになっても良いんじゃないかと感じていた

今まで人から好いたことが無かった

そんな自分を必要だと言ってくれる人が現れた


とても喜ばしいことなのに

なぜ自分はそれでもまだ踏みとどまっているのか


明日から学校に行かなくていい

明日から辛い思いをしなくて良い

何もしなくても、藍火が食事を運んでくれるらしい


それは紐男の思考そのままであったが

非常に楽な生活だと二有無は思った


そもそも自分がどうこうやって勝てる相手ではない

ならいっそ身を任してみれば

そう思うと二有無の心はスーッと晴れた


それと同時に脱力して、自分から藍火に近づく


「私.....今幸せ」


それに呼応して藍火もまた密着する


「僕も.....」


少し気が軋み、老い落ちた家屋

周りには誰もに居なく、孤独の家

そんな中で二人は愛し合う


ピシャリ


「!!」

「え、誰?」


その瞬間、その暗い空間をまた白い光が灯した

その音と眩しい光に思わず二人は出入り口の方を振り返る


「.....二有無、ここにいたんか」


そこには正昭が立っていた


いつも自分のことをイジメていた正昭が今こうして

自分の家の前で立っている


あまりにも奇妙で二有無は目が点になる

それと同時に今までのことを思い出して目が鬼のようになった


その怒りの視線に正昭は気まずくなり頬をポリポリとかいた

二有無から目線を外す


「あっ!やっぱここに居た!」


正昭は次にそう声を出した

目線を外した先に少女が立っていたからだ


髪が長髪の青黒く、肌が外人のように白い

人形のように美しく可愛らしい顔

だがどこかで不気味さを漂うその見た目


その後、正昭はその二人の様子を確認した

その少女が二有無とキスをした後であると察した

二有無とその少女の服が少し濡れ、唇を易田が伝っていたことが

何よりの証拠であった


正昭が探していた人間

少女はその全ての特徴に合致していた


「二有無、とりあえずその女から離れろ!」


そう必死に正昭は言う


「え.....。なん.....」


そう二有無が聞き返すが早く、藍火が正昭に問い詰めた


「あなた誰なの?私たちの敵なの!?」

「いや.....」


その言葉に怒り、藍火は二有無から思わず手を放す

その瞬間を正昭は見逃さなかった


素早く家の中に入り、藍火から二有無を取り戻す


「え、ちょ.....。何やって」


手を引っ張られ、二有無は藍火からはがされる

困惑する二有無はそっちのけで正昭は駆けた


家の裏口の方へ駆けた


「な、何やってるの!私の二有無君を返して!」


後ろから藍火が正昭の方へ走ってきた


「二有無。端的に話す、俺についてきて欲しい。話は後でする」


そう引っ張られる二有無に言うと、正昭はより足を速く回転し

裏口へ来ると、強引に開ける


何が何だか分からない二有無だったが

正昭の真意を確かめたいという思い

そして、感じることが出来た正気


その二つの思いで

二有無は裏口に用意してあった靴に突っ込む

正昭も同じく最初に準備してあった靴を履く


「取り合えず、海岸の方へ移動するぞ」


そう言うと、扉を開け

真っ暗や夜の闇を駆けていった

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